夫が退職して家で過ごすようになったことで、妻が不調を訴えるケースがあります。心療内科・内科医の黒川順夫(のぶお)さん(81)=大阪府豊中市=はこうした症状を「主人在宅ストレス症候群」と名付けました。症候群はなぜ発症するのか、対応策は。黒川さんに聞きました。
くろかわ・のぶお 1942年生まれ。83年に大阪府豊中市に黒川内科を開業。著書に「夫がうっとうしい妻たちへ『主人在宅ストレス症候群』の解消・予防法」(かもがわ出版)など。
学会発表は30年前
「主人が退職してずっと家にいるようになってから、ストレスで体調が悪くなった」。年配女性の患者さんに共通の訴えがあることに気づいたのは30年ほど前です。十数例をまとめて、日本心身医学会近畿地方会で「主人在宅ストレス症候群」と名付けて発表しました。1991年のことです。
症状はさまざまですが、その人が持っている体の弱い部分に不調が出るようです。身体的には胃潰瘍(かいよう)や高血圧、心理的なものではうつ状態や不安神経症、心身症としては過敏性腸症候群、慢性関節リウマチなどストレスが原因で様々な疾患が生じます。
患者は夫が定年退職したあとの60歳代の女性たち。私が「主人~」と名付けたのは、妻が夫のことを「主人」と呼ぶ世代だからこその症状だと思ったから。この世代の夫は亭主関白や男尊女卑の考え方を持ち、「妻はずっと家にいるものだ」と思い込んでいる人が比較的多い。妻への束縛が症候群発症の原因の一つだと考えました。
30年たった今も、夫による妻の束縛はあります。
「俺のメシは」「どこに行くんや」。妻は「昼ご飯も作らないと」「すぐに帰らないと」と、いつもどこかで夫のことを気にしている。夫が家でじっとしているだけで、妻はうっとうしい。大きなストレスを抱えています。特に70歳代以上の団塊の世代では、このような夫婦が多いのではないでしょうか。
離婚「選択肢」の時代に 若い世代にも潜む「予備軍」
一方、30年前から変わってきたことは、働く妻が増えたことです。かつてのように妻が夫に「尽くす」のではなく、夫と一緒に家事や育児をしている家庭が増えました。
午後には取材班の記者が「自分事」として感じたことなどを書いたコラムを配信します。
以前は妻が「離婚したい」と…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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