川崎市で開催中の「KAWASAKIしんゆり映画祭」で4日、上映を1度、中止した従軍慰安婦問題がテーマの映画「主戦場」が上映された。ミキ・デザキ監督は舞台あいさつに登壇し、「本日は私の作品を上映することができ、本当にうれしいです」と喜びを口にした。その上で「日本の表現の自由の大勝利だと僕は思っております」と満面の笑みを浮かべた。
【写真】「主戦場」上映の経緯を語る中、涙したKAWASAKIしんゆり映画祭の中山周治代表
「主戦場」は6月に、主催のNPO法人KAWASAKIアーツから配給の東風に上映の打診があったが、共催の川崎市からKAWASAKIアーツに対し、一部出演者から上映差し止めを求めて訴えられている作品であることから、上映に対する懸念が示され、10月27日に上映の見送りが発表された。その映画祭の判断に議論が起こり、映画祭側は2日に、最終日の4日に中止を撤回し、上映すると発表していた。
デザキ監督は「日本のメディアが、あまり照明を当てない問題に語っていくことの大切さを知った。独立自主の映画、映画祭が政府からの圧力に負けずに、ずっと伝え続けることは大切。なぜなら、この映画に関するニュースは、絶対、NHKには報じられないだろうということを知っているからだ」と笑い飛ばした。
上映前には「学術研究及び卒業制作のため」と聞いて取材に応じたのに、商業映画として一般公開されたとして、デザキ監督と配給の東風を相手に上映禁止と総額1300万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した「新しい歴史教科書をつくる会」の藤岡信勝副会長が会場に姿を見せた。藤岡氏は「舞台あいさつをさせていただきたい。デザキさんがお話をされるということですから、私も出演者の1人だから、出演者の立場からお話をさせていただこうと」と主張した。
上映中止が撤回されたことについては「大変、遺憾なこと。私は当事者。一方の側の意見だけを聞いて(上映を)決めるのは、公的な税金を補助された立場として(映画祭は)アンフェア」と訴えた。さらに、藤岡氏は、映画祭側に出した、上映するか否かを問う公開質問状の答えを聞きたかったと主張。「返事なしに一方的に上映が決められている。(映画祭の)中山周治代表に公開討論を設定してもらいたいと、1日に、ちゃんと申し入れをしていますからね」とも訴えた。
ただ、この日、来場することを事前に映画祭側に通知していたかと問われると「事務局は電話がつながらないので」と“アポなし”で直撃したことを認めた。記者から「いきなり来て、舞台あいさつをさせてくれと言って、それが認められると思うのか?」と問われると、藤岡氏は「もちろん、フェアな観点に立てばいいのでは? 手作りの映画祭なんでしょ? あなた、主催者じゃないのに、何でこんなことを言うの?」と言い返した。
「主戦場」の上映には、約90人の観客が訪れた。【村上幸将】
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