乗客106人と運転士が死亡し、乗客562人が重軽傷を負ったJR宝塚線(福知山線)脱線事故は25日、発生から18年を迎えた。遺族らはそれぞれの思いを胸に現場を訪れ、犠牲になった人たちをしのんだ。
兵庫県尼崎市の追悼施設「祈りの杜(もり)」では、JR西日本主催の追悼慰霊式があり、遺族ら285人が出席。長谷川一明社長が「社員一人ひとりが事故の反省を心に刻み続け、安全な鉄道を築き上げていくことをお誓いする」と述べた。
出席した大森重美さん(74)=神戸市北区=は、事故で長女を亡くした。亡き娘へ祈りを捧げた後は、JR尼崎駅前で、企業の刑事責任を問う「組織罰」の導入を求める署名活動に立った。「娘が帰ってくるのが一番良い。帰って来ないからこそ、亡くなったことを無駄にはしたくない」と話した。
事故で長女を亡くした藤崎光子さん(83)=大阪市=は事故現場で娘に思いをはせた。18年経ち、事故が少しずつ風化してきていると感じるという。「この近くに事故車両を置いて資料館をつくり、訪れる子どもたちが事故を知ることができるようにしてほしい」と語った。
農家の松本三千男さん(87)=尼崎市=は、事故発生時刻の午前9時18分ごろ現場を訪れた。一昨年まで、追悼のために現場近くの土地にダイコンの花で「命」の字を描いてきた。高齢で花文字をやめて貸し出した土地には今年、専門学校が開校。関係者の協力で、屋上に塗料で「命」の文字が描かれた。松本さんは「事故の記憶を風化させないためにも引き継がれてよかった」と話した。(中塚久美子、岩本修弥、松永和彦)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル