様々な理由で十分に学べなかった人たちのための学びの場「公立夜間中学」。来春、北海道内で初めて、札幌市立星友館中学校が開校する。札幌市民のほか、近隣11市町村の住民が通える。ニーズと期待の高い公立夜間中学はどんな学校で、課題は何だろうか。
8月、開校に向けたシンポジウムと説明会が、JR札幌駅にほど近いビルの会場とオンラインで開かれた。会場を訪れた64人の中に、札幌市の派遣社員斎藤亜耶さん(30)の姿があった。
小さいころから引っ込み思案だった斎藤さんは、小学3年のころから不登校になった。中学校には入学式しか行けなかった。
最初に勤めた会社は3カ月で辞めた。計算のやり方がよくわからず、商品の在庫管理や発注がうまくできずにつまずいた。
仕事をするには計算ができないとだめだと思い知った。基礎から学び直したいと考え、いろいろと探した末に見つけたのが、市民が運営する自主夜間中学「札幌遠友塾」だった。
2017年から通い始めた。塾のスタッフが温かく、年上のほかの受講生との会話は楽しかった。苦手の数学に取り組み、計算を理解できるようになった。英語の勉強も新鮮だった。3年間学んだあと、昨年からはスタッフとして受講生のサポートに携わる。
星友館中学に入って、今度は学校生活を送りたいと願っている。「こういう学校ができるという情報すら入らない人もたくさんいるし、探し方がわからずに孤立している人もいるかもしれない。もっと知ってもらいたいです」
札幌市の男性(84)も入学を考えている。農家に生まれ、小学2年の時に終戦を迎えた。1953(昭和28)年に中学を卒業した。
中学は小規模校で、英語はカタカナでルビを振って暗記させられた。かねて、いつかきちんと発音できるように英語を学びたいと思っていた。字がへただと言われてコンプレックスを感じていた習字も習いたいという。
星友館中学のことは、市の広報紙で知った。「1学年40人というから入れてもらえるかどうかちょっと心配ですが、ぜひ行きたい」と話した。
シンポジウムでは専門家によるパネルディスカッションがあり、「課題」についても意見が交わされた。一つは「教員の人材確保」だ。
「北海道に夜間中学をつくる会」共同代表で、札幌遠友塾を立ち上げた工藤慶一さんは、最近の事例を紹介した。
遠友塾に通う受講生の中には…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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