「今日、うちにジョン・レノンが来る」 あの日の記憶を抱いて少女は

 「今日、うちにジョン・レノンが来るんです」

 内緒だったけど、小学5年生のノリコちゃんは先生に打ち明けた。

 「あるわけないだろ」と軽くあしらわれた。

 でも、本当に彼は東京の自宅にやってきた。

 夕方に玄関で出迎え、覚えたばかりの英語で「ナイス・トゥー・ミーチュー」とあいさつした。

 ジョンはきちんと足をそろえ、おだやかな顔で「サンキュー」と言って握手を求めてきた。

 トレードマークの丸いメガネをかけ、長い髪をうしろで束ねていた。見上げるほど背が高く、白っぽい服を着ていたせいか、ふわっと光が差しているように見えた。

 この時期、音楽活動を休止していたジョン。「日本の伝統文化の柔道を見たい」と、妻のオノ・ヨーコさんに伝えたという。

 ノリコちゃんの自宅には柔道場があり、父親が師範として教えていた。父親とヨーコさんの弟が親しかった縁で、見学が急きょ決まった。来日もプライベートだったが、訪問も極秘にされた。

 ジョンは和室に通されると、「柔道着を着てみたい」と言った。英語は、ヨーコさんが訳して伝えた。

 応対していたノリコちゃんの母親は、驚いた。「柔道では下着をつけませんよ」と教えると、何のためらいもなく、さっと裸になって着替えた。

 細身の体には、中学生用の柔道着が合った。初心者だったが、黒帯を締めて道場に向かった。

 道場には、ノリコちゃんの父親と中高生ら30人ほどが待っていた。柔道では稽古を始める前、全員が正座をして礼をする。ジョンも青畳の上に両ひざを折って座り、姿勢をただした。

有名人に落ち着かない生徒、ジョンが求めたことは

 ただ、ノリコちゃんは、道場…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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