「何もないから価値がある」北海道美深町、羊とビールにいざなわれて

 村上春樹氏の小説「羊をめぐる冒険」の舞台とそっくりな場所が、北海道美深(びふか)町にある。羊、白樺(しらかば)林と放牧地に囲まれたペンション。現地を訪ねると、羊をめぐる実話の物語があった。

 国内に現在550カ所以上あるブルワリー(クラフトビール醸造所)で、北海道美深(びふか)町の「美深白樺(しらかば)ブルワリー」は最北に位置する。美深町は、村上春樹氏の小説「羊をめぐる冒険」の舞台といわれる。

 北海道の真ん中・旭川と最北の地・稚内を、天塩川に添うように延びる国道40号沿いに、レンガ造りで三角屋根の美深白樺ブルワリーはある。つくりはじめたのは2018年。農業用倉庫を改装した建物内は、ビールとジンギスカンのにおいが漂う。

 「美深まで飲みに来たいと思わせる日本一おいしいビールを造りたい。シンプルにおいしいビールを」

 ブルワリーの社長、高橋克尚(よしなお)さん(50)は、そう話す。

 国内大手IT企業で社内インフラ整備をしていた高橋さんが、初めて美深町を訪れたのは17年9月だった。

 大きなプロジェクトが一段落し、燃え尽き症候群のような状態に陥っていた高橋さん。気分転換に友人が北海道旅行に誘ってくれたのがきっかけだった。

 村上春樹氏の小説を愛する友人は毎年のように美深町を訪れ、小説に出てくる別荘とそっくりの「ファームイントント」というペンションに泊まっていた。高橋さんはレンタルした大型バイクで道内をめぐりながら、「トント」に2泊した。

 そこで経営者の柳生佳樹さん…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment