東京電力福島第一原発事故後、避難指示が解除された地でゼロからスタートした福島県内の牛を飼う農家たち。全国的に飼料・光熱費の高騰や子牛の落札価格の下落など苦境が続く中、原発事故の影響も抱えながら耐え忍んでいる。
阿武隈山地に位置する葛尾村の佐久間牧場では、牛乳を搾れる母牛120頭に子牛、種付け前の育成牛を合わせ約220頭の牛を飼っている。
原発事故前は130頭以上を飼っていた。だが原発事故で全村避難になり、牛舎から牛の姿は消えた。
村の一部で避難指示が解除された後、8頭の牛を北海道から買い付けることから牧場の再建が始まった。放射性物質の検査で生乳の安全性が確認されると、2019年1月、震災当日の朝以来7年10カ月ぶりに、生乳の出荷を再開した。
いま、牧場の1日の生乳の生産量は約3トン。だが、飼料、光熱費の高騰で経営は赤字だ。牧場の佐久間哲次さん(47)は「月の経費は1年前と比べ200万円は増えた。酪農で一番大きな経費は飼料代。それがこの1年で牧草は1・5倍。もともと原発事故を受けて復旧したから、二重苦、三重苦。余力がない」と訴える。
乳牛の飼料は、主に牧草と…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル