新型コロナ対応の緊急事態宣言が、期限の9月30日で解除される。だが、対応の起点となる保健所を9月中旬に訪ねると、職員が患者や濃厚接触者への電話連絡に追われるなど、依然として業務が逼迫(ひっぱく)し、「限界だ」との声が上がった。冬の「第6波」も懸念される中、職員は「第5波」の教訓を指摘する。
「保健所は、もう持たない」。大阪府北部、人口約40万人の中核市の枚方市保健所。記者が9月13日に訪ねると、白井千香所長(59)が厳しい表情でそう語った。
当時に比べると、9月末現在では新規感染者が減少傾向だが、今回の宣言解除に関し「感染者数が下がりきってはいない中での解除で、解除後は人の流れも増える。もう『第6波』が来る覚悟を決めている」と話す。
同保健所では、コロナ禍前は常勤職員約60人で難病や精神保健、動物愛護などの業務をしてきた。臨時職員らを増やして最大時は120人になったが、通常業務もある。第5波まで「波」が来るたび、超過勤務が月に約200時間になる職員もいた。24時間体制の職場ではないが夜中も患者の急変があるため、午前3時ごろまで職員が残ったり、帰宅した職員が携帯で対応したりしてきた。白井さんは「問題は、コロナ関連業務が保健所に集中していることだ」と指摘する。
記者が訪ねた際、ホワイトボードの前に、職員数人が集まった。「今日は入院121人、うち重症4人。自宅療養者279人、宿泊療養者152人になっています」。保健師の女性がホワイトボードに書かれた人数を読み上げた。2人が亡くなったことや、症状が重い自宅療養者への往診の手配状況も報告された。
別の一室では、約20人が電話をかけたりパソコン入力をしたりしていた。「疫学調査」で、濃厚接触者の特定や入院の必要性の判断のため、患者に電話して職場や学校名、症状、基礎疾患、発症2日前から現在までの人との接触などを聞く。
担当の保健師女性は「人との接触が少ない人で1時間。多数と接触した人は、接触した人への説明も必要で、1件で3~4時間かかる」と疲れた様子で話した。第5波の8月下旬には、患者に初めて電話するまで3~4日かかるケースも出て、市から応援職員をもらった。
疫学調査の前には、「発生届」の入力もある。発生届は原則、医療機関が、陽性患者の氏名や症状、入院の必要性などを国のインターネット上のシステムに入力する。保健所もこの届で患者を知る。しかし、「半数の医療機関が手書きでFAXしてきて、保健所が代行入力をする。全国的に同様の問題があり、患者への連絡が遅れる」と、全国保健所長会副会長も務める白井さんは話す。
「お熱は38度ですね」。保…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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