涌谷保育園(宮城県涌谷町)を運営する社会福祉法人理事長によるパワーハラスメント行為で精神的苦痛を受けたとして、元保育士ら12人が29日、社会福祉法人に対して総額約2600万円の損害賠償を求める労働審判を仙台地裁に申し立てた。
申立書によると、理事長は2015年4月に就任し園長職も兼務した。理事長は、あいさつされても無視をしたり、気に入らない相手を大声で威嚇して問い詰めたりした。こうしたパワハラ行為が繰り返され、20年3月までに10人の保育士が退職した。
19年12月、保育士ら24人が労働組合を結成して団体交渉を申し出た。理事長から一部の保育士に送られたメールに、「集団で欠勤することは『偽計業務妨害罪』に該当する可能性もある」などと記載されていたという。
事態が改善しないことから、組合員ら約20人が20年3月末に退職届を提出。理事長は園長職を辞するとの誓約書を示したことから、組合員らは復帰したものの、その後、理事長とは連絡が取れない状態が続いた。約1カ月後、理事長が園に姿を見せて、新たに作った「施設管理者」というポストに就いたと表明したという。
パワハラ行為はその後も続くなど状況はさらに悪化した。保育士らは心身ともに疲れて子どもたちを安心安全な環境の中で保育することが保証できなくなったと考え、昨年11月までに退職した。
県によると、12月以降は、必要な保育士を確保できない状態が続いている。園の保護者会の集まりでは、「安心して子どもを預けられない」などと保育士不足への不安を訴える声が相次ぎ、一部の園児は他の施設に移っている。
複数の保護者によると、理事長はパワハラ行為について全面的に否定しているという。社会福祉法人側は取材に対して「担当者が不在」としている。
申立書提出後、仙台市内で会見した労組委員長は「わたしたち全員、子どもが大好きです。園を離れたくなかった。でも、我慢をしていたら問題は続く。ここで声を上げて解決することで、いい保育ができる状態に戻したい」と話した。(角津栄一)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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