広島市佐伯区五日市のコイン通りにある信号機の撤去を佐伯署が計画している。「信号機が多く渋滞の原因になっている」との声が住民から寄せられ、警察庁の指針とも適合したためという。しかし近くのスーパーや高齢者たちから反対の声が続出。「横断歩道を安心して渡れなくなる」などとする2千人以上の署名が提出され、同署は検討を続けている。
【地図】信号機の撤去が検討されている広島市のコイン通り。沿道にある造幣局にちなんで名付けられた
五日市のシンボル的な通りで、店舗が立ち並ぶ長さ約1・3キロのコイン通り。「信号機が多過ぎる」と、撤去を求める住民の声が同署に寄せられたのは昨年春だった。同署は、コイン通りにある8カ所の交差点の信号機について、警察庁が2015年に示した指針も踏まえて検討。「五日市中央4丁目1番交差点」が撤去の候補に浮上した。
指針は、隣接する信号機との距離が原則150メートル以上などと、交差点に信号機を設置する際の五つの必要条件を提示。条件を満たさない交差点では信号機撤去の検討を求めている。
同交差点は北側にある信号機との距離が約70メートルしかなく、コイン通りに合流してくる脇道の交通量も1時間当たり約20台と少ないことから、同署は撤去が可能と判断。昨年8月、住民に撤去の方針を示した。
ところが、交差点付近にあるスーパーなどが反発。昨年12月、地元の揚元第1、揚元第2の両町内会が約1500人分の反対署名を同署に提出した。揚元第2町内会の冨田忠町内会長は「買い物客など多くの人が交差点を歩いて渡る。安全のため、信号機を残してほしい」と要望する。
佐伯署は昨年12月から、同交差点にある車両用の信号を黄か赤の点滅に変更。信号での規制を緩めることで車の渋滞や歩行者の安全性にどういう影響があるかを検証中だ。同署は「住民からは賛成と反対の両方の意見を聞いている。検証結果も踏まえて慎重に検討したい」とする。今年2月に同署が開いた住民説明会では、参加者からは反対の声が相次いだという。
信号機を巡っては、警察庁の指針を受け、他の地域でも撤去や見直しの動きがある。広島中央署は昨年12月、広島市中区上八丁堀の「拘置所北交差点」の信号機を撤去した。18年の調査で1時間当たりの車両通行台数が最大231台と、警察庁の指針にある300台以上を下回るほか、隣接する信号機との距離も約90メートルで、指針の条件を満たしていなかったためという。
県警は信号機撤去の説明会を地元で開き、反対の声がなかったとする。だが、通勤で交差点を車で通っていた安佐北区の会社員佐藤喜子さん(48)は「朝夕は自転車や歩行者が多く、拘置所や病院の壁が高く見通しも悪い。信号機がなくなり危険を感じたため、通勤ルートを変更した」と話す。
一方で、同署が昨年5月、中区白島地区の4交差点の信号機を本年度中に撤去する方針を住民に伝えたところ、住民が4200人の反対署名を提出。同署は3交差点について同年度中の撤去を見送った。呉市三条2丁目の両城小前の交差点も、16年に呉署が撤去を打診したが、「信号機がなくなれば事故が起きる可能性が増す」などとの要望書が保護者などから出され、現在も信号機は残したまま同署が検討を続けている。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース