重たい気持ちで自転車をこぎ、3日ぶりに小学校の正門をくぐった。発熱で2日間欠勤してしまった5月半ばの、休み明けのことだった。
久保敬は体がこわばるほどの緊張を感じながら、5年2組の教室の入り口に立ち、引き戸を開けた。
「なにしに来てん」
「帰れ!」
子どもたちからこんな言葉が飛んでくるのではと身構えていた。
しかし、入り口近くに座る男の子と目が合うと、彼はこう言った。
「先生、熱下がったんか。よかったな」
4月、シャツの胸ぐらをつかんだ久保を、にらみつけた子だった。
初めて一人ひとりの表情をしっかりと見た
予想もしないその言葉に久保…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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