国策によって不妊手術を強制された原告の訴えは届かなかった。東京地裁は30日の判決で、旧優生保護法下の強制的な手術について違憲性を指摘したものの、国への賠償請求を退けた。同様の訴訟を起こしている各地の被害者にも落胆や憤りが広がった。
原告の請求をいずれも棄却する――。30日午後2時過ぎ、東京・霞が関の東京地裁103号室。伊藤正晴裁判長が判決主文を述べると、原告の男性(77)は、法廷内で体を震わせた。
「お金じゃないんだ。国が間違ったことをしたのだから謝ってほしいだけなのに」
拡大する判決後に記者会見で思いを語る原告の男性(左から2人目)=2020年6月30日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ、福留庸友撮影
手術から60年あまり。苦しみ続けてきたという男性は、判決後に開かれた記者会見で、怒りをあらわにした。「裁判でも、こんなつらい思いをさせられるとは思っていなかった」。そしてこう訴えた。「(国の謝罪が)無理なら、元の体を返してください」
男性は中学生だった1957年春ごろ、入所していた施設の職員に産婦人科に連れて行かれた。「悪いところは何もない」と伝えたが、説明もないまま手術された。少し経ってから、施設の先輩から「子どもができなくなる手術だ」と教えられた。父親が手術をさせたと思いこんだ。国による強制だったと知るまで、長年恨み続けた。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル