静岡県熱海市で4人が亡くなり、多くの安否不明者が出ている土石流は6日午前、生存率が著しく下がるとされる「発生72時間」が過ぎた。被災地では警察や消防などによる捜索が続く一方、打撃を受けた国内有数の観光地を支援する輪も広がる。
警察や消防、自衛隊など1100人態勢での捜索活動は、この日も午前6時に始まった。
海に近い逢初(あいぞめ)川下流の浜地区では、大型の重機が土砂やがれきを撤去する。一面がぬかるんだ土砂に覆われたままの現場周辺で、救助隊員らは壊れた家屋の中をライトで照らしながら、取り残された人がいないかを確認していた。
生存の可能性が著しく低くなるとされる「発生72時間」が過ぎ、捜索活動を見守る安否不明者の親族らは焦りを募らせている。
「早く見つけてあげたいという気持ちしかない」
妻の路子さん(70)が行方不明になっている田中公一さん(71)はそう話すと、捜索に立ち会うため足早に規制線の中に入っていった。
捜索にあたる救助隊員も捜索の難しさを吐露する。
「かいてもかいても泥がなくならない。現場は想像以上だった」。現場に入っている横浜市消防局特別高度救助部隊の小川直哉・消防士長(39)は5日夜、朝日新聞の取材に語った。
一帯にたまった泥は腰の高さに達する場所もあり、救助の精鋭部隊でさえ何度も足を取られた。救助犬を使い、人が入れない狭い隙間にも気を配る。住宅1棟の捜索を終えるまでに、日をまたぐこともあるという。
隊を指揮する貞方拓真・消防司令補(37)は、救助と捜索を迅速に進めながら二次災害も防ぐという難しさがあると指摘。「全員を必ず見つけ出すという強い気持ちで現場に臨む」と話した。
熱海市は、6日朝の時点で安否が確認できていない人は、前夜の64人から24人に減ったと明らかにした。
県が5日夜、住民基本台帳に基づいて安否が確認できていない64人の名前や性別のリストを公表したところ、本人や親類などからの連絡が相次ぎ、41人の所在が確認できたという。一方、新たに住民登録のない1人の安否が不明であることが判明したとしている。
斉藤栄市長は6日朝の対策本部会議の終了後、「発生72時間は生存に対する節目と言われている。全力を挙げて多くの人が救助されることを願う」と報道陣に述べた。また、市は避難所を市内の2ホテルに集約していたが、満員の状態になったとして、新たに避難を希望する人には別の3カ所を避難所として案内している。
続々と救援物資 寄付金も集まる
土石流の被害を受けた熱海市…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル