「兵士」になった実習生 身分偽り増えた給料、彼女のため車も買った

 ベトナム語に「ボドイ」という言葉がある。「兵士」の意味だ。

 日本の実習先や留学先から逃げ出し、工場や農家などで働くベトナム人が仲間どうしで呼び合う隠語でもある。

 2018年8月、低賃金の実習先から転職先を探して逃げ出した男性(25)は、その由来をこう説明する。

 ベトナム戦争でベトナム兵は死を恐れず、しぶとく戦い抜き大国アメリカに勝利した。その「英雄」たちの姿と、経済大国・日本で正規の働き口がなくとも、借金を返すため、家族のため、そして自らの生き残りのために「戦う」自分たちの姿を重ね合わせる――。

 「おれも、ボドイって言えるんじゃないですか。まあ、日本にいるボドイはそこまで誇りではないけど」と男性は、通訳を介してそう言い、少し恥ずかしそうに笑った。

低賃金や労働環境の悪さから、失踪するベトナム人技能実習生が大勢います。彼らは、自らを「ボドイ」(ベトナム語で兵士の意味)と呼び、独自のコミュニティーを作っています。そんなボドイの一人の素顔に迫ります。

給料明細には全く別人の名前

 失踪してボドイとなった男性は、関東地方の郊外にある大手自動車部品メーカーの工場で働き始めた。

 座席に革を張る仕事で、九州…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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