不登校の中学生たちのための公立学校、草潤(そうじゅん)中学校が4月、岐阜市に開校しました。開校を進めた早川三根夫・前岐阜市教育長(66)の背中を強く押したのは、2019年に起きた市立中学3年の男子生徒がいじめを苦に自死した問題です。
この問題と向き合うなかで、早川さんは、普段の学校生活で、いかに子どもたちがストレスを受け、悩みを相談できずに苦しんでいるかを感じたといいます。今の教育のどこに問題を感じ、新たな中学校で何を目指すのか、を聞きました。
――「ありのままの君を受け入れる新たな形」を掲げて草潤中学校がスタートしました。
学校のありようにフィットできない子がいることの方が、むしろ自然なんじゃないかという考え方が原点にある。
今までの日本の教育は、どこの学校に行っても、どこの地域でも同じ教育を受けることができるという機会均等が方針になっていて、それはそれですばらしいし、それが基本であることは間違いありません。多くの子どもにとって学校は輝ける場所だとも思う。
けれども、その中でうまく適応できない子がいるということも見なければいけない。その子たちが持っている違和感が、次の時代を動かす原動力になる可能性もあるでしょう。
学校に来られない子たち、引きこもりになった子たちが、世の中とのつながりを断ち切ることなく多様に学ぶ場を確保することを考えるべきだと気づいた。地域の学校だけが学びの平等の場ではない、岐阜市全体でみて学びの平等の場を確保すればいい。
そもそも、すべての多様な子どもたちのありようを、従来の「学校」というひとつの仕組みだけで受け入れるというのは無理です。それなら、もう一つの、オルタナティブの学校をつくることで、その子たちを受け入れていこうと考えたわけです。
――岐阜市教育委員会が不登校の中学生に配慮した「特例校」をつくる方針を示した翌月にいじめ自死問題が起きました。
準備を進めてきて、このタイミングで、いじめによって子どもが自死するという最悪の事態が起きました。この事態と向き合う中で、不登校特例校をつくる意義がますますはっきりしてきました。
中学生は、自分の進路のためにいろんなストレスを受けている。内申点を取るために、学級のリーダー的な仕事に就いたり、授業のときに一生懸命に手を挙げたり、そういうことを強いられていた。強いられている中で、不安を持って、本人たちの充実感につながっていかなかった。
内申は「テストの成績だけでなく、授業中の発言や部活動など学校生活も評価の対象に」という考え方で生まれた制度なのに、それが生徒たちをおびえさせる材料になってしまっている、と早川さんは説きます。記事後半で紹介しています。
それで攻撃的になったり不登…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル