新屋絵理、山崎琢也
静岡県で1966年にあった強盗殺人事件で死刑が確定した袴田巌さん(85)の裁判をやり直すよう求めた再審請求審で、袴田さんの逮捕から約1年後にみそタンク内で見つかった衣類について、弁護団が、みそに漬かったのは極めて短期間だったことを示す新たな鑑定書を東京高裁に提出した。袴田さん以外の誰かが衣類をタンクに入れたとの主張を改めて裏付けるものとして、弁護団は再審を早期に始めるよう求めた。
タンク内で見つかった衣類は赤みが残る血液が付着し、犯人が犯行時に着ていたものかどうかが争点となっている。
これまでの裁判で検察側は、袴田さんが事件直後に衣類をタンクに隠した(衣類はみそに1年以上漬かっていた)と主張。これに対し弁護団は、みそに約1年漬かると「メイラード反応」という化学反応で血痕が黒褐色に変わるため、検察側の主張と赤みが残る衣類とでは矛盾があると指摘していた。最高裁は昨年、血痕が変色する科学的要因を調べ直すよう高裁に審理を差し戻した。
争点の「犯行着衣」、弁護側「捏造の可能性」を指摘
弁護団が今回新たに提出した法医学者らの鑑定書は、メイラード反応とは別の化学反応で、ヘモグロビンの変化による血液変色を分析した。その結果、みそに漬かると赤みの要因となるヘモグロビンが酸化して数週間で赤みが消えるとし、「衣類をみそに1年以上漬けた場合、赤みは残らない」と結論づけた。
弁護側は5日の会見で、二つの化学反応の結果から袴田さんの犯人性は否定されたと訴え、「袴田さんの逮捕後に、第三者が証拠を捏造(ねつぞう)した可能性がある。再審開始を確実にする決定的な証拠だ」と述べた。
検察側は高裁に対し、メイラード反応については「あまり進行していなかった」と説明している。(新屋絵理、山崎琢也)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル