「分散図り、暮らし続けられる都市に」 大震災100年、識者の視点

現場へ! もっと地震に強く⑤

 この6月、免震装置を実物大で試験する施設「Eアイソレーション」が兵庫県三木市で稼働を始めた。建物を支える免震ゴムに強い力をかけて地震時の動きを再現、性能を確かめる。

 機器が動き出すと、直径1メートル以上ある円柱形のゴムが何度も大きく引き伸ばされては戻っていった。このゴムで地面からの揺れを受け止め、上の建物を守るのが免震だ。2月に大地震が起きたトルコでも、免震の病院は診療を続けられたという。

 試験施設は関係者の悲願だった。免震のビルは1980年代から広がり始め、その数は全国で5千棟を超える。近年は高層ビルにも使われ、ゴムも大型化してきた。しかし国内には実物大の装置がなく、海外頼み。8年前に発覚したデータ偽装事件も信頼に影を落とした。

 この施設は、海外のものより精密にデータを取れる。真の性能がわかれば安心して使え、技術の向上にもつながっていく。

 「今年は関東大震災から100年。この間、横浜や東京のビルが壊れるような大地震は起きていない。地震が来るまで免震ゴムが本当に大丈夫かわからない状態だった」。お披露目の式典で、計画を進めてきた和田章・東京工業大名誉教授(77)は自動車の衝突試験も引き合いに出しながら、実物を使って確かめる意義を強調した。

 実際、東京はこの100年、島嶼(とうしょ)部を除いて震度6弱以上の揺れを経験していない。その間に人口は3倍以上に膨らみ、地盤の悪い低地にも街は拡大。さらには高層ビルが密に立ち並ぶようになった。現代の巨大都市が大地震でどうなるかもまた、未知の領域だ。

今の耐震基準は命を守る最低限 一極集中は被害を増幅

 建築の専門家として高層ビルの設計や審査にも携わった和田さんだが、最近の講演では、高層ビルの林立と一極集中への疑問を繰り返し投げかけている。

 「技術的にできる、合法だか…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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