人生には三つの坂があるという。上り坂。下り坂。そして、まさか。東京電力福島第一原発事故が起きたあの日。日本人初の宇宙飛行士という輝かしい経歴を持つ男の目の前にあったのは、「まさか」だった。元宇宙飛行士が「原発難民」になった、その坂道をたどった。
秋山豊寛(とよひろ)さん(78)は東日本大震災当時、福島県田村市滝根町に住みシイタケ農家をしていた。自宅は福島第一原発から約32キロ離れた場所にあった。
東京電力が、原子炉内の水蒸気とともに放射性物質も空気中に放出する「ベント」の作業に取りかかったのが2011年3月12日。この日午後3時36分、1号機の原子炉建屋が水素爆発を起こした。
秋山さんはラジオで「空中からセシウム検出」というニュースを聞き、着の身着のままで自宅を出て、軽トラックを走らせた。「参ったな。さて、どこに行こうか」。原発難民としての「まさか」の始まりだった。
宇宙で「これ、本番ですか」
秋山さんが宇宙に行ったのは、90年12月2日。ソ連(当時)のバイコヌール宇宙基地からソユーズで打ち上げられ、日本人初の宇宙飛行士になった。
当時、TBS記者だった秋山さ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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