能登半島地震の後、限界集落を見捨てるかのような議論が、SNS上で飛び交っています。「当事者以外が上から目線で『選択と集中』を進めれば、大切な農山漁村が本当に崩壊してしまいかねない」。そう語り、「地方消滅」のムードにあらがう社会学者の山下祐介・東京都立大学教授に聞きました。
――能登半島地震でも、「復興」についての議論が始まっています。
「まず『創造的復興』という言葉には注意が必要です。災害発生後の復興で、次の災害に備え、より強靱(きょうじん)な地域づくりを行う考え方です。阪神・淡路大震災や東日本大震災、熊本地震でも提唱されましたが、そもそも、それは当事者の考えなのか。第三者が一方的に取捨選択し、地域の未来を描いていないか。創造的復興の文脈でよくやってしまうのは、被災者の代わりに勝手に『こうあるべきだろう』と示すことで、それと異なる方向を希望する被災者が、ものを言えなくなってしまうことです。結局、事業や計画に乗れない人は地域に戻れなくなってしまい、コミュニティーが崩れていくということが東日本大震災では生じました」
「災害があると、復興を急げとの世論の力が働きがちですが、復興はゆっくりと、当事者の回復を待ち、その声を聞きながら丁寧に進めなければなりません。いま能登の被災者は、日々を生きるのに精いっぱいでしょう。まずは本人たちが生きる力を取り戻し、声をあげられる状態まで支援していく。そのうえで、地域の復興は原状復帰が基本だと私は考えます。当事者の声を聞くなかで創造的復興や集団移転のような議論が出るとしても、それは次の段階です。まずは元通りに戻すことが前提としてあって、その上での創造でなければ、地域の破壊につながることになる」
――限界集落の復興も課題となっています。
「高齢化や人口減少が進む限界集落や孤立集落が日本各地にありますが、これを数字だけで見ていると間違います。ずいぶん前から『地方消滅』が語られながら、現実にはなかなか消滅しない。これは、その周辺に、数字では見えない当事者がいるためです」
東日本大震災の失敗を繰り返すな
――「見えない当事者」ですか。
「高齢者が多いと、いずれ『…
※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル