「助けて-!」ブラジルの子らシャウト 愛知の防犯教室

 全国の在日ブラジル人の約3割が集まる愛知県で、日本語に不慣れな子どもを守る防犯教室が始まった。外国籍の子どもが不審者と出くわすケースも確認されており、愛知県警が独自の防犯術をレクチャーする。

 「ウン、ドイス、トレス(1、2、3)……助けてー!」

 9月中旬、同県豊田市の体育館。ブラジル人学校「EAS豊田校」の児童27人が、危険な目に遭ったときに大声で助けを呼ぶ練習をした。

 「大声は一番の味方。日本語で言えると、周りの人に伝わりやすいよ」

 講師を務めた県警生活安全総務課の鈴木晶子巡査部長(36)が得意のポルトガル語でアドバイスした。

 同校はブラジル政府が認可したカリキュラムを母国語で教えるブラジル人学校。親の都合などで一時的に来日し、日本語が十分に理解できない子どもが多い。来年1月の校舎移転に伴い、スクールバスから切り替えて徒歩で通学する子どもが増えるため、通学路の安全確保が課題だった。

 講習では、不審者役の警察官を相手に足を動かして抵抗したり、走って逃げたりして身を守る方法も指導。ブラジル人の子どもたちにはなじみが薄いという防犯ブザーの使い方や、万一の時に駆け込める「こども110番の家」についても説明があった。参加したエンドウ・マリアさん(11)は「看板は見たことがあるけど、今まで意味が分からなかった」と話していた。

 県警は2015年から、各地で体験型の防犯教室を開いているが、外国語での開催は今回が初めて。今後も外国人の増加が見込まれることもあり、県警から在名古屋ブラジル総領事館に提案して実現したという。

 総領事館によると、県内にはブラジル人学校が計10校あり、県警は他校でも順次教室を開く予定。県警生活安全総務課の墨修明(すみのぶあき)警部(47)は「各国の子どもを守るため取り組みを進めたい。将来的には、中国語などの教室も開いていけたら」と話している。

総領事館「日本社会の一員という安心感も」

 愛知県で暮らすブラジル人は5万9334人(昨年12月時点)。国内のブラジル人の約3割を占め、全国で最も多い。県内には約26万人の外国人が住んでおり、ブラジル人をトップに、中国人(4万9159人)、フィリピン人(3万7346人)と続く。

 教育現場の課題の一つが日本語の習得だ。文部科学省の昨年度の調査によると、日本語の力が足りず、授業などで特別な指導が必要な外国籍の児童生徒は愛知県内に9100人おり、全国最多。特にポルトガル語が母国語の児童生徒が約45%を占める。

 一方、県警によると、高校生以下の外国人が不審者から帰宅中に腕をつかまれたり、あとをつけられたりしたという相談が、昨年、少なくとも8件寄せられた。日本語ができないなどの理由で警察に相談しない外国人も多いとみられ、県警は氷山の一角とみている。

 在名古屋ブラジル総領事館の副領事のエリーザ・マイアさんによると、親が日本語に不慣れなため子どもの安全に不安を感じ、1人で街を出歩かせないようにしている家庭もあるという。「ブラジルより治安がよい日本でも、危険な目にあう可能性はゼロではない。警察の取り組みに参加することで、日本社会の一員として扱われ、守られているという安心感も持てるのではないか」と期待する。(村上友里、田中恭太)


Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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