小麦、大豆、ばれいしょ、牛肉、生乳……。数多くの生産量日本一の食材を誇る北海道。近年は気候変動や食料価格の高騰、人口減による担い手不足など課題も見える。道産食材の伝道師であるフランス料理シェフの三國清三(69)さんに、「食王国」の魅力や可能性について聞いた。(聞き手・日浦統)
――東京タワーがすぐそばに見えます。ここ「Dining33」には強い思い入れがあるそうですね。
「1982年、欧州で武者修行して帰国した時、日本はフランス料理が浸透していませんでした。食事のとき、みんなワインではなく水を飲んでいました。北海道はまだ早いと思い、東京に店を開きました」
「あれから40年。この麻布台ヒルズ森JPタワーは、高さが330メートルで日本一のビルです。店があるのは33階、フロア面積は3300平方メートル。僕の名前は三國清三。すべて33でつながる。僕は今年70歳。最後のキャリア、最後の花を飾る店になると感じています」
――道内28市町が参加する「北海道食のダイヤモンドロマン」の顧問などを務めて、道内の食の魅力を国内外に伝えていますね。
「ラーメン、ジンギスカン、ホタテ、とうきび……。北海道フェアは、東北から沖縄までどこで開いてもドル箱です。北海道の食材は味が深く、新鮮で健康的だという特徴が認知されているからです。アジアだけでなく、欧米にもっていっても負けない。北海道の食材はダントツで日本一、いや世界一です」
「豊かな自然や新鮮な食材。そんなイメージをみんなが想起できる点もいい。食べたときの鮮度や濃厚さは記憶にずっと残っているから、北海道というとみんなとびつくわけです」。
――その「秘訣(ひけつ)」はどこにあるのでしょうか。
「食材は気候、風土によって…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル