高橋淳 村上友里 山下龍一
栃木県那須町で2017年3月、登山講習会に参加した県立大田原高の山岳部員7人と教諭1人が死亡した雪崩事故で、5人の遺族が県などに計約4億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、宇都宮地裁であった。浅岡千香子裁判長は「雪崩に対する危機意識の希薄さから、講習会を中止しなかったことが事故の一因」とし、県と県高校体育連盟に計約2億9千万円の賠償を命じた。指導役の教諭3人への請求は棄却した。
判決によると、雪崩事故は17年3月27日朝、雪崩注意報が出ている中、県高体連が開いた講習会中に起きた。犠牲になった部員と教諭は、スキー場近くの斜面を登っていたところ雪崩に巻き込まれた。前日からの積雪や降雪のため、指導役の教諭3人は登山の計画を中止し、雪上歩行訓練に変更したが、具体的な範囲を協議していなかった。
事故後、講習会本部にいた責任者の教諭が連絡用無線機から離れ、携帯電話を持っていなかったことなどから警察や消防への救助要請が遅れた。
判決「雪崩の可能性認識できた」
判決は、指導役の教諭らが遅くとも27日朝に気象情報などを確認していれば、雪崩が起こる可能性を認識できたと指摘。「漫然と講習会を続け、事故が起きた」とする遺族側の訴えを認めた。事故後の対応の遅れや参加者に落ち度がないことを踏まえ、賠償額を算定した。
県側は、亡くなった教諭について「大人であり身を守るすべがあった」とし、県側の責任を差し引く過失相殺を主張したが、判決は「抽象的な主張だ」として退けた。
指導役の教諭3人は、講習会の責任者だった1人と部員らを引率していた教諭2人。昨年2月に業務上過失致死傷罪で在宅起訴され、いずれも無罪を主張。地裁で刑事裁判が続いている。(高橋淳)
なぜ教諭3人の賠償責任が認められなかったのか。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル