この4月に広島に赴任した新人記者の目には、かなり危ない場所に映った。遮断機も警報機もない踏切が存在していることを知ってはいたが、現物を見るのは初めてだった。「危険な踏切」は地域にどう息づいているのか探りたくなった。
意外と近くにあった。広島駅から北へ約5キロの「戸坂第1踏切」。単線で1時間に6回ほどJR芸備線が通る。張り込んでみると、近所に住むという70代女性が歩いてきた。
墓参りに行く際に使うという。150メートルほど先に遮断機と警報機がついている踏切が見えた。だが、女性は「このあたりは急勾配の坂が多く、できるだけ近道を使いたい。この道は廃止してほしくない」と話す。
「来ますね」。女性が急に声を押し殺した。
耳をすますと、「ガタンガタン」と電車の音が聞こえてきた。まもなく2両編成の芸備線が目の前を走り抜けた。
新人記者は取材に夢中で、隣の踏切の警報音に気がつかなかった。女性は「うっかり電車を見逃してしまうかもしれない。安全な踏切になってくれれば安心」と語った。
「廃止は難しいんじゃないの?」と言う住民
遮断機も警報機もない踏切は「第4種踏切」と呼ばれる。危険性を問題視した総務省は2021年、廃止するか、遮断機と警報機をつけて「第1種踏切」にするかの対応を国土交通省に求めた。第4種の踏切事故の件数は第1種の1・7倍に上り、死亡事故が絶えないと指摘した。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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