東京電力福島第一原発の事故から10年。処理済み汚染水の海洋放出や、「核のごみ」最終処分場の誘致など、原子力を巡る問題は国と地方の関係を問い続ける。かつて原発計画を拒んだまちで、衰退する地方のいまと地域振興のあり方を考える。
2017年3月。三重県紀北町の岡村哲雄さん(71)は、7年続けたNPO法人の活動に幕を閉じた。
人口減が止まらないまちで、「高齢者が生きがいを感じられる社会」をめざした。名古屋や大阪など都会の人たちが古民家に滞在し、地元の人と交流しながら1次産業を体験してもらう。そんなねらいだった。
理想は遠かった。資金不足もあり、思うほど人を呼ぶことができなかった。
NPOを閉じると、家族の反対を押し切って町議会議員に立候補、当選した。
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「地域振興とは、まちに暮らす人が生きがいを感じられること。汗をかいて努力することです」
模索を続ける岡村さんの原点には「原発」がある。
原発誘致、短期決戦で決着
中部電力の芦浜原発計画が、00年に県知事による「白紙撤回宣言」で消えると、当時の海山町(現・紀北町)で大白(おおじろ)浜への誘致運動が本格化。反対派も推進派も、芦浜で続いた両派の対立を教訓に「短期決戦」をめざし、01年11月18日に住民投票が実施された。
投票率88・64%。賛成2512票、反対5215票。反対派の圧勝だった。
「都会の電気を、なぜ三重でつくらないといけないのか」。岡村さんも反対派の中心にいた。開票を受け、ピークに近かったしし座流星群がきらめく夜空の下、万歳を繰り返した。
これでまちが落ち着くと思った…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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