子どもの不登校について当事者や保護者らから多くの意見が寄せられている。いじめ、教師への反発、体調不良など不登校の理由はさまざまだ。ただ、学校の閉鎖的な雰囲気や画一的な指導に加え、受け皿を巡る対応が長期化につながるケースも目立っている。
【画像】不登校の児童生徒や保護者が利用できる主な学校外の機関
九州在住の40代の優美さん=仮名=は、中学生の娘が私立学校在籍を理由に、地元の適応指導教室への入室を拒まれたことに憤る。適応指導教室は教育支援センターとも呼ばれ、不登校児童生徒や保護者からの相談を受けたり、児童生徒の学習指導をしたりする。文部科学省の2017年度調査によると、全国の6割強の自治体が設置し、基本的に自治体内の児童生徒を受け入れている。
優美さんの娘は小学校のころ、友人関係のトラブルやクラスの雰囲気になじめず不登校になった。心機一転し、私立中学に進学したが、不登校傾向は続く。ただ、娘は転校を望まず学校に戻りたいと考えており、復帰への方法を模索していた。
優美さんによると、フリースクールなども検討する中で昨春、地元の適応指導教室を見学した。娘は「ここなら通えそう」と笑顔を浮かべた。しかし教室に問い合わせたところ「私立の子どもの受け入れは難しい」。娘はひどく落胆したという。
「前例ない」受け入れ進まず
「同じ自治体で暮らしているのに私立だけ差別するのはおかしい」と優美さんはいぶかる。学校を通じて自治体の教育委員会とやりとりしたが「前例がなく、一人のために対応できない」との返事だった。ところが新年度に教育委員会の担当者が代わり、改めて打診すると、一転して受け入れが認められた。
文科省によると17年度、全国の適応指導教室に通う児童生徒は約2万1千人で、うち私立学校は約200人と1%にとどまる。文科省は16年、全国の教育委員会に私立学校の児童生徒の柔軟な受け入れを通知しているが「公立の子どもを想定しているところが多く、受け入れはほとんど進んでいないのが現状だ」(担当者)と認める。
優美さんには苦い記憶がある。小学生だった娘が学校に行き渋ったとき、当時の教師の助言を真に受け「何とか学校に行かせようとしか考えていなかった」という。「誰もつらさを分かってあげられない中、娘に寄り添い、話をきちんと聞いてあげれば良かった」と自戒を込めて振り返る。
娘はこの1年、学習意欲を失うなど精神的に落ち込むこともあった。優美さんは適応指導教室で笑顔を見せる娘にほっとする一方、なお釈然としない思いも抱える。「子どもにも家族にも大事な1年を無駄にされた。せっかくの受け皿も、人によって対応が異なるような仕組みは直すべきではないか」
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース