「君がボス」 闇バイトに応募後、「ルフィ」から届いた依頼に被告は

 京都市の時計店から腕時計(6900万円相当)を奪ったなどとして、五つの事件で強盗などの罪に問われた建設業、伊藤一輝被告(30)の裁判員裁判の第2回公判が22日、大阪地裁であった。「ルフィ」と名乗る人物の指示を受けたとする被告の役割を巡り、検察、弁護側が主張を交わした。

 弁護側の冒頭陳述によると、伊藤被告は2018年ごろに建築会社を設立。7人ほどの社員を抱え、売り上げが1億円に達した時期もあったが、21年に離婚すると、2人の子の親権争いなどで仕事に手が回らず、借金を抱えた。被告は借金を返済しようと、ツイッター(現X)で募集していた闇バイトに応募すると、大津市の質店への強盗を指示されたという。

 検察側が証拠として示した被告のメッセージアプリの記録によると、被告は当初、「キング」と名乗る人物とやりとりを始めた。キングは「(報酬は)最低200万です」「時計取れるだけ取ってください」などと被告に説明。その後、やりとりの相手は「ルフィ」と名乗る人物に変わった。被告が「ルフィさんはどの立場ですか」と尋ねると、ルフィは「トップです」と返答。ルフィからは「伊藤君がボスで動いてもらいます」と現場での指示役を依頼されたという。

 弁護側の冒頭陳述などによると、被告らは22年3月13日、大津市の質店に強盗に入ろうとしたが、扉を壊せず失敗し、被告は建造物侵入未遂容疑で逮捕・起訴された。起訴後に保釈されたが、数日後、ルフィから「同じようなことをしないか」と京都の事件を持ちかけられたという。

 被告は「さすがにできない」と断ると、ルフィから「じゃあ人を手配するだけでいい」と頼まれた。被告は「手配だけならいいか」と数人をルフィに紹介。だが、ルフィから「連絡がつかない」と言われ、「人を探し、その人たちに指示を伝えてくれ」と依頼されたという。

 被告は昨年5月2日の京都事件で、実行役の男女らにルフィの指示を伝えたとされる。だが、ルフィから指定された場所に持参した時計が何者かに奪われたことなどから不信感を強めた被告は、ルフィとの関係を絶ったという。

 弁護側は大津、京都の両事件とも、被告がルフィから「店の者とは裏でつながっていて、警察に捕まることはない」と説明されていたと主張。事件への関与は従属的で、「ルフィにだまされた面があった」と訴えた。

 一連の事件で期待した報酬が得られなかったことなどから、被告は同月13~14日、犯行で知り合った男らに、大阪市北区での逮捕監禁致傷事件などを指示したとされる。検察側は被告の役割が実行役から指示役、首謀者へ変化していったと主張した。

 京都事件を巡っては、フィリピンが拠点の特殊詐欺グループ幹部とされる今村磨人(きよと)被告(39)が「ルフィ」を名乗って指示したとして、強盗罪で起訴されている。

 伊藤被告は京都・大津の両事件のほか、大阪市北区の逮捕監禁致傷など▽同市浪速区の強盗致傷▽大阪府守口市の公務執行妨害など、五つの事件で起訴され、これらの事件についても無罪などを主張している。(山本逸生)

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment