「命の選別をしないために」想定される人工呼吸器不足に備え、タブーを超えた議論を(BUSINESS INSIDER JAPAN)

「どの人から人工呼吸器を装着させていけばよいのか。そのような判断を医療者だけに求めるのは非常に酷なこと。日頃から、他人ごとではないんだと、心の備え、情報の備えをしておいてほしい」

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これは4月1日に行われた新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の会見での、東京大学医科学研究所・武藤香織教授の発言だ。

人工呼吸器があれば助けられるのに、人工呼吸器が無い……。一方で、あと数日で亡くなってしまう可能性が高い患者に人工呼吸器を使い続けている……。

新型コロナウイルスの流行の長期化によって患者が今後も増え続けてしまえば、こういった状況になることも十分想定される。あと数日で亡くなってしまう可能性が高い患者から人工呼吸を取り外し、その分を助けられる患者の治療にあてる。

武藤教授の指摘は、私達自身がこの究極の選択を問われる当事者であることを強く意識させるものだった。

「医療崩壊」の中で直面する「命の選別」問題

4月22日に開催された専門家会議の資料でも、次のような一文が記載されている。

「今後、一部の医療機関では治療の優先度をつける必要に迫られる局面も想定されうる」

感染者が爆発的に増えた非常時において、より多くの人を救う方法を考えることは当然だ。一方で、治療する人に優先度をつけることは「命の選別」にもつながりかねない。

その判断基準は、公正で透明性のあるものでなければならない。

感染者が爆発的に増加しているニューヨーク州では、感染症の世界的大流行を想定した人工呼吸器の使用方法に関するガイドラインが公開されている。

その中では、「『今の重症度』だけで判断してカラーコード(重症度の指標)を決める」「48時間治療をしても回復しなければ場合によって人工呼吸器を外す」といった基準が記載されている。

内容の妥当性についてはさまざまな意見はあるだろうが、少なくともこのガイドラインは、長年の議論の末に策定されてきたものであり、その考え方なども含めて参照できる透明性が担保されている。

一方日本では、こういった事態を想定した明確な方針が無いうえ、そのための議論もほとんど進んでいないのが現状だ。

だからこそ専門家会議は「こうした状況下では、優生思想による判断が行われかねない」と、強い懸念を示している。


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Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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