「命より原発推進優先された」 最高裁の「壁」克服に策 避難者訴訟

 福島県浪江町津島地区のやぶの中にひっそりたたずむ一軒家。家主であり、津島訴訟の原告、武藤晴男さん(66)は5月、仙台高裁の「現地進行協議」のため訪れた3人の裁判官に訴えた。

 「震災から12年以上が過ぎました。私たちはどんどん高齢化し、残された時間が少なくなってきています」

 津島は大部分が帰還困難区域のままだ。津島訴訟は地区の約630人が原告になっている。

 国と東京電力の責任を求め2015年に提訴し、一審の福島地裁郡山支部は21年、国・東電の責任を認めた。しかし、地域のすべてを除染し、再び暮らせるようにする「原状回復」については退けられた。現在、仙台高裁で係争中だ。

 東電福島第一原発事故後、各地に避難した人らが原発事故の責任を求めた訴訟。昨年6月、最高裁が国の責任を認めない判決を言い渡したにもかかわらず、なお闘い続ける弁護士や原告らを追います。

 現地進行協議は、原状回復が必要だと裁判官に分かってもらうため、弁護団が申請し実現した。「津島地区も一部で避難指示が解除された一方、大部分は帰還のめどが立たない。裁判官はしっかりと現状を理解してくれたと思う」と、山田勝彦弁護士は話した。

 津島訴訟の弁護団は今年に入…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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