「図書館のない市」全国9市 大阪・守口市、脱却図る(産経新聞)

 「図書館のない市」からの脱却に向けて、大阪府守口市が歩み出している。大阪市に隣接し約14万3000人が暮らすベッドタウンでありながら、公立図書館が存在していないのだ。図書館のない市は全国に9市のみだが、図書館整備を見送ってきたのにはそれぞれの理由や事情がある。(小泉一敏)

【表でみる】図書館のない市

 日本図書館協会(東京)によると、図書館法に基づく図書館が設置されていないのは、平成30年現在で全国814市区のうち兵庫県養父市や北海道夕張市など9市。このうち守口市は、市立生涯学習情報センターの大規模改修に合わせて、市立図書館を整備することにした。来年4月の開館を目指している。

 ただ、同センターの中にはこれまでにも「図書施設」があり、蔵書約16万4000冊の貸し出しを行うなど、実質的に図書館としての機能を担ってきた。

 センター自体は平成5年にオープンし、プラネタリウムを併設するなど生涯学習の拠点とうたう一方、従来の図書館のイメージを払拭するために、図書施設を図書館法上の図書館にしなかった。

 その後も特段の不都合はなく、図書館にする利点も見当たらなかったことから、担当者は「今回の改修まで図書館をつくるという議論にならなかった」。図書館に移行する際に、蔵書も充実させる予定だ。

 また、養父市も令和3年の開館を目指して図書館を整備中。耐震強度不足に伴う市文化会館の建て替え計画が進められ、ホールや公民館に加えて図書館も設けることにした。

 同市にこれまで図書館がなかった背景には「平成の大合併」がある。養父市は平成16年4月、旧養父郡の4町が合併して誕生した。旧4町は図書館を持っておらず、公民館や図書室で蔵書の貸し出しを行っていたが、合併後も他の施設の再編が優先され、整備が後回しになってきたという。

 財政的な理由で図書館の設置が困難になった自治体もある。北海道夕張市は19年に財政再建団体となり、もともとあった市立図書館を廃止せざるを得なくなった。その後は保健福祉センターに規模を縮小した「図書コーナー」を設け、市民向けの読書サービスを再開させた。

 鹿児島県奄美市は、市内にある県立奄美図書館とのすみ分けが進んでいる。県立奄美図書館は、奄美大島にある同市と周辺町村をカバーする役割を果たしており、市の担当者は「市立図書館を独自に整備する必要性がなかった」。代わりに6カ所の公民館に図書室を設け、遠隔地には移動図書車の巡回も行っている。

■図書館にするメリットは?

 図書館法に基づく公立図書館になると、どのようなメリットがあるのか。文部科学省によると、図書館設置への補助金は平成9年度に廃止されており、それ以降は財政的な優遇はない。

 その一方で、利用者にとっての利点はいくつかある。日本図書館協会によると、持ち出し禁止の図書資料の複写は、公立図書館だと著作権法の制限内で施設で行うことができる。また、閲覧したい図書資料がなくても図書館同士の連携で他の自治体から提供を受けやすくなり、利便性は高まる。

 さらに、公立図書館であることを名乗ることによって、文化活動の中心を担う施設であることが明確になる。同協会の担当者は「さまざまな情報が図書館に集約されるメリットは大きい」と指摘。官民を問わず組織や団体同士をつなげたり、地域で古くから伝わる伝承の保存や活用を担ったりと、拠点としての役割を果たせるとしている。

Source : 国内 – Yahoo!ニュース

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