新型コロナウイルスのワクチン接種で、企業などでの「職域接種」の申請受け付けを政府が突然休止し、北海道内でも波紋が広がっている。観光地の旅館や飲食店、中小企業などは団体でまとめて接種し、経済を回復させる切り札として期待していたからだ。突然の方針転換に、各団体は「駆け込み」で申請するなど対応に追われ、申請済みの団体でもワクチン供給の遅れの影響が出ている。(三木一哉、西川祥一、中沢滋人、中野龍三)
職域接種で目立つのが観光や飲食など接客が多い業界だ。コロナ対策の「接触制限」で大打撃を受けており、従業員らの接種を進めて客を呼び込む体制を整えたいとの思いが強い。
道南の大沼国定公園一帯の七飯町、鹿部町、森町の宿泊や飲食、運輸などの業者が加入する「ぐるり道南観光推進協議会」は、加入事業者の従業員400人程度に加え、希望する住民にも600人分の枠を用意する。協議会の小林克彦会長は「観光従事者だけでなく、地元のだれもが安心できる態勢を整え、観光客にも不安なく来てもらいたい」という。
政府は今月1日、職域接種を21日から始めると表明。「1千人以上」の条件で大企業や大学で始め、中小企業も団体を通じてまとめて接種希望者を集める方式を想定した。道内では24日時点で申請件数は180件に上る。
ところがワクチン接種の調整を担う河野太郎行政改革相が23日夜、ワクチン供給が追いつかなくなる懸念から、25日夕での申請受け付け休止を表明した。
室蘭商工会議所は会員の中小企業1750社を対象に職域接種の準備を進めていたが、国の方針変更に振り回された。
もともと数会場での接種を想定していたが、河野氏の発言を受けて申請準備を前倒しし、25日までに2会場分の接種計画をまとめて申請。しかしもう1会場分は間に合わなかった。担当者は25日にぎりぎりの申請を終えた後、「接種をやりなさいと言っていた国が急に方針を変えた。バタバタの申請で厳しい事態だった。3カ所目の会場を担当してもらえる病院も見つかったのに、申請が間に合わず残念」と話した。商議所の栗林和徳会頭は「接種を望む会員すべてに対応できるか懸念している」との談話を出した。
函館商工会議所は23日、8…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル