堺市中区で昨年11月、生活保護を受給中の男性(当時63)が暴行され死亡した事件で、市職員の対応などを調査してきた堺市の検証委員会が26日、「市行政のガバナンス(統治)が杜撰(ずさん)」などとする報告書を公表した。
この事件では、男性に暴行を加えて死亡させたとして隣人の楠本大樹被告(33)が傷害致死などの罪で起訴されたほか、楠本被告に生活保護費を不正支給した疑いで中区役所職員4人も書類送検された。市は大学教授らで構成する検証委員会をつくり、職員らから聞き取り調査をしてきた。
報告書によると、男性と楠本被告が知り合ったのは昨年10月。同月にあった区役所での男性の面談に楠本被告が同席し、男性を拳で殴ったが、居合わせた職員は警察に通報せず、上司にも報告しなかった。男性への暴行はその後もあったが、職員は恐怖心から楠本被告の「言いなり」になっていたという。
楠本被告は「金を貸している」などとして男性の生活保護費を管理した。社会福祉協議会などが管理すべきだったが、「弁済金」として金の受け渡しを区役所が黙認したことで、被告側に男性の生活保護費の大半が渡る結果を助長したと指摘した。男性の親族の了解を得ず、男性の生命保険加入状況を楠本被告に明かすなどの問題対応もあったという。
報告書は区役所の対応を「『我流』、場当たり的、個人任せの非組織的対応」とした。そのうえで、区役所を指導する立場にある本庁の存在感のなさも指摘した。
楠本被告の逮捕を受けた区役所の会見で、暴行や金銭の授受について十分な確認をしないまま情報発信した点にも疑問を呈した。再発防止策として研修の強化などを市に求めた。
報告を受けた永藤英機市長は「今回のような事案が発生したことを重く受け止めている。提言を踏まえ、市民の信頼回復に努める」とのコメントを発表した。(井石栄司)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル