三沢敦
長崎住吉郵便局(長崎市千歳町)の元局長の男性が多額の現金をだまし取った疑いがある問題で、日本郵便九州支社の豊田康光支社長が2日、初めて市内で記者会見し、調査結果などを公表した。この日午前の衣川和秀社長のオンライン記者会見を受けたもの。被害者への全額補償の方針や、新たな再発防止策で不正の根絶を図る考えを示した。
「ここ長崎県で多数の方々が元局長により多額の金銭を詐取された。被害に遭われた方々、関係者の皆様に多大な迷惑をおかけしたことを改めておわびします」。午後3時、同市岩川町の九州支社長崎事務所であった会見で、豊田支社長は深々と頭を下げた。
4月初旬に本社が不正を公表してから約2カ月。これまでの社内調査の結果、被害者は62人、詐取した総額は12億4331万円に達したという。
被害者のうち53人が元局長の知人や親族。「金利のいい特別な貯金がある」と持ちかけ、1993年に廃止されたバブル期の金融商品の証書を手渡していた。本来は廃止と同時に処分すべきものだが、元局長は不正に持ち帰って保管。これとは別に自らパソコンで「特別金利預かり証」と印刷したニセの証書を渡すこともあったという。
詐取した金について元局長は、住宅4軒やアパート1棟、新車16台、中古車5台などの購入に充てたほか、ゴルフや飲食にも使っていたという。派手な生活ぶりにもかかわらず、不正が見抜けなかったことについて豊田支社長は「現時点で共犯者の存在は確認できていない」「今後の調査で深めていきたい」と述べるにとどめた。
再発防止策として示されたのは、局外での現金預かりの原則禁止や、廃止された証書などの返却システムの管理強化など。異動のない旧特定郵便局長による「局の私物化」を防ぐため、5年に1度、別の局で働かせて「牽制(けんせい)効果」を高め、不在期間中に局への検査を実施して不正発見につなげることなども盛り込んだ。「実効性が担保できるのか」といった質問も相次いだが、豊田支社長は「これらの施策を通じて不正の端緒をつかむことができる」と話した。(三沢敦)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment