「多様な生き方を認める社会に」 同性婚めぐる訴訟、あす判決

 法律上同性同士の結婚(同性婚)を認めていないのは違憲だとして、愛知県内の同性カップルが国を訴えた訴訟の判決が30日に名古屋地裁で言い渡される。2人は「性別に関係なく好きな人と一緒に生きやすい国になってほしい」と願う。

 原告は大野利政さんと鷹見彰一さん=いずれも仮名、30代男性。2018年4月から2人が暮らすマンションには子ども部屋がある。「家族が顔をあわせる機会を多くしたい」との思いでリビングのそばに据えた。新品の学習机とベッドも用意したが、この部屋を使う子どもは今もいない。

 2人とも子どもが大好きで、いつか子育てをしようと意見が一致。だが、子どもを受け入れるには「壁」があった。同性カップルには特別養子縁組が認められていないのだ。里親制度など子を持つ道はあるが、法律婚の夫婦に比べて選択の幅は狭い。

 2人は16年秋に出会い、交際がスタート。マンションを購入する際にも同性婚が認められていないことの不利益を感じていた。

 パートナーは配偶者とみなされないため、当時は住宅ローン契約で収入合算の対象とされず借入額を増やせなかった。どちらかに万が一のことがあっても、残された方はマンションの相続もできない。「結婚した夫婦と変わらない関係を築き、納税もしているのに」

 19年の提訴から4年。社会は変わったと感じる。大きな要因は性的少数者のカップルを公的に認める「パートナーシップ制度」の広がりだ。

 性的マイノリティーの権利を守る活動をする認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」によると、制度を導入する自治体は19年7月時点は24自治体だったが、23年1月時点には255自治体に増えた。全国の約15%にとどまるが、人口換算すると約65%になる。

 制度のもとでは、家族向けの公営住宅への入居や、公立病院でのパートナーの入院・手術の同意などが可能になる。民間でも、携帯電話の家族割引が適用されるなどの活用例もある。

 2人はもしもの時の財産の取り扱いなどを盛り込んだ公正証書を作っている。制度の広がりも歓迎だ。ただ、いずれも法的な効力は婚姻に遠く及ばないことは強く実感している。

 2人は共に暮らし始めたころから子育てに充てるための貯金をしている。その額は100万円を超えた。同性婚が認められれば、特別養子縁組が使えるようになり、子ども部屋も貯金も2人の願い通りに使うチャンスが広がる。

 21日に閉幕した主要7カ国首脳会議G7広島サミット)の参加国のなかで、日本は同性婚の法的整備で後れをとっている。カナダフランス、米国、英国、ドイツには同性婚を認める法律があり、イタリアには同性カップルを公的に認める制度がある(2022年10月現在)。

 「家族で楽しく暮らしたいという思いはみな同じ。選択肢を狭めず、多様な生き方を認める社会になってほしい」(高橋俊成、奈良美里)

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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