「大丈夫」の電話の後、家が消えた 鼻つく生木のにおい

【動画】捜索が続く宮城県丸森町の土砂崩れ現場=野津賢治撮影

 台風19号の上陸から3日がたった15日も、各地で新たな被害が確認された。豪雨による泥流や土砂に家屋が流され、言葉を失う人たち。行方不明者の捜索が続き、被害の全容はいまだにつかみきれない。東北でも、首都圏でも、生活・交通インフラの復旧は見えてこない。

 宮城県丸森町の子安地区。谷側が崩れた急坂を1キロほど上ると、むっとする生木のにおいが鼻をついた。山の数百メートル上から土砂が木々をなぎ倒し、人の背ほどもある岩が転がる。15日午前、警察官が初めて現地で捜索した。

 道路は3メートルほど下まで流され、家が土台を残してなくなっていた。かばんや白い毛糸、赤い布、黄色いバケツが散らばる。町や住民によると、この家には大槻竹子さん(92)と娘の利子さん(70)が暮らし、利子さんの妹の小野正子さん(63)と夫新一さん(67)も避難してきていたという。1人の遺体が見つかり、3人はなお連絡がつかない。

 利子さんの長男恵太さん(36)は「家がなくなっている」との連絡で駆けつけ、言葉を失った。「川の下流に家の一部らしきものがあったので、よっぽど強い勢いだったのだと思う。覚悟はできたけど、一部でもいいから見つかってほしい」

 地元の佐藤勲区長によると、新一さんは近くの廻倉(まわりぐら)地区の区長。台風が近づいた12日は家々を訪ねて無事を確認し、避難所に誘導した。午後6時ごろにいったん帰宅した後、「自宅の電気がつかなくなり、妻の実家に来た。心配しないでください」と電話があったという。午後9時には、利子さんが隣家の女性に電話で「大丈夫」と話していた。

 13日午前5時ごろ、近くを通…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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