天台宗の寺で約14年にわたり僧侶から性暴力を繰り返し受けたとして、四国に住む尼僧の叡敦(えいちょう)さん(55)が1月31日、東京都内で記者会見し、天台宗務庁(大津市)に対し、この僧侶と、加害行為の手助けをしたとして大僧正の僧籍剝奪(はくだつ)を求める申し立てをしたことを明らかにした。
懲戒審理申立書などによると、叡敦さんは2009年10月、僧侶から寺に呼び出されて性行為を強要され、その後も恫喝(どうかつ)や暴力などで心理的に監禁され、繰り返し性暴力を受けたという。母の供養を頼みに訪ねた大僧正から、一番弟子としてこの僧侶を紹介され、寺への参拝を指示された、と訴えている。
大僧正は、僧の最高位で、現在6人しかいない比叡山での千日回峰行を満行した「北嶺大行満大阿闍梨(ほくれいだいぎょうまんだいあじゃり)」の一人。叡敦さんによると、僧侶からの被害を大僧正に相談したが、そのたび僧侶に従うよう指示されたという。会見で叡敦さんは「大僧正は僧侶の行為を助長し、被害を隠蔽(いんぺい)し続けた。僧侶による心理的監禁を放置し、助長した。天台宗は正しい判断をしてくれると信じている」と語った。
僧侶は朝日新聞の取材に「いまは申し上げられることはない」と回答。大僧正は、代理として寺の執事が「事実かどうかも申し上げられない。今後は延暦寺と天台宗務庁が対応する」と答えた。天台宗務庁は「対応を協議している」としている。
叡敦さんは19年に僧侶の行為を強姦(ごうかん)罪などで警察に告訴したが、嫌疑不十分で不起訴処分となった。(編集委員・大久保真紀)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル