戦前から戦中にかけて、新聞や雑誌はときに検閲で発禁処分となり、損失に苦しんだ。印刷を終えたのに販売できなくなるからだ。それゆえ問題になりそうなところを先回りして、伏せ字や削除をする例が多かった▼作家の石川達三が日中戦争に従軍して書いた小説『生きている兵隊』は雑誌の初出では例えばこんな感じだった。「兵士たちは自分等が×××××××××はなった」。伏せ字は「宿営した民家に火を」である▼日本軍をめぐる赤裸々な表現が当局ににらまれるとの懸念からだ。そんな自己検閲が、実際の検閲に輪をかけて表現の世界を息苦しくした。似たようなことにならなければいいが。…… 本文:603文字
朝日新聞社
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