「夫源病」という言葉を使わない理由 定年後に必要な夫婦の自己変革

 「夫が定年を迎えたことをきっかけに体調を崩してしまう女性は少なくない」。1995年から大阪でのべ1万人以上の女性たちの悩みに接してきたフェミニストカウンセラーの加藤伊都子さんは言います。「これまでの関係のひずみが退職後に凝縮して現れる」と話す加藤さんに、夫婦へのアドバイスを聞きました。

妻からのケア、サービスに無自覚な男性

 夫の定年後、心身の調子を崩す妻たちに接してきました。血圧や肝臓の数値が悪化したり、自己免疫疾患を患ったりと身体に不調が出る人もいれば、うつ症状や「夫は自分を追い出そうとしている」といった被害妄想に陥る人もいます。

 この世代は、夫が外で働き、妻は主婦として家を切り盛りしてきた夫婦が多い。資産形成、大きな買い物、子どもの進路などの最終決定権は夫が握りがちで、妻に向かって「世間知らず」「稼いでいない」といった言葉を浴びせ、対等なパートナーシップを確立できずにきたケースが少なくありません。

 自己肯定感が低かったり、お金を自由にできなかったり。脆弱(ぜいじゃく)な立場に置かれてきた妻には、定年を迎えて家にいる夫の存在がストレスなのです。夫に常に監視されているように感じる人もいます。

 故・石蔵文信医師が、夫のせいで女性の体調が悪化するとして「夫源病(ふげんびょう)」を唱え、2010年代には熟年離婚の原因として報じられるようになりました。

 夫の定年退職を機にきしむ夫婦関係を加藤さんは長年みてきました。抜け出すためには、妻は、夫はどうしたらよいのでしょうか。

 夫源病はあるかないかと問われたら、「ある」というのが私の考えです。

 ですが、私自身はその言葉を…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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