お笑い芸人・せやろがいおじさん
沖縄の青い海をバックに、赤Tシャツ・赤いふんどし姿で時事問題を叫ぶ動画で知られるお笑い芸人、せやろがいおじさん(33)。最近では、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長だった森喜朗元首相の女性蔑視発言など、様々なジェンダー問題についても発信しています。ただ、自身がジェンダーに関心を持ったのは、過去の自分の動画をめぐる「炎上事件」がきっかけだったそうです。
「誤解を与え、すみません」 謝罪したらさらに炎上
3年前、かつて自分が投稿した動画が、「ミソジニー(女性嫌悪)だ」と指摘を受けました。「せやろがいおじさん」として活動を始めて、少しずつ注目してもらえた時期です。特に批判されたのが、写真を加工して自分を良く見せようとしている女性を揶揄(やゆ)する動画でした。
だけど、まさにその時、僕もよく政治家がするような典型的なダメ謝罪をしてしまって。「僕は女性をさげすむ気持ちなんてありませんでした。しかし、誤解を与え、不快な思いをさせてしまったなら、すみません」みたいな。自らの差別意識を認めず、「誤解」として受け手の責任にさせていたんです。で、さらに炎上した。「謝罪風開き直り、かつ弁明だ」「自分の問題点について、あなたは何もわかっていない」などと批判を受けました。そう言われて「自分の問題点ってなんやねん。批判してくる人たちは、どこが問題だと思ってんの」と、疑問と興味が混ざったような気持ちになりました。
そこで、批判された動画について改めて考えました。
すると、写真を加工して自分を良く見せようとする人は、女性だけではなく、男性にもいる。じゃあ、なんで俺は女性に限定していっただろう。あ、自分の中に「女性をいじったら面白い」という感覚があるぞ。これは、女性を蔑視していると言われても仕方がないじゃないか――。そう気づきました。
こういう体験を話しているうちに、だんだんと女性からお話を聞く機会が増えていって、雪だるま式に僕の中でジェンダーへの関心が大きくなっていきました。
「男性には自分に見えていない特権と加害性がある」
振り返ってみると、お笑い界ってめちゃくちゃ男社会で、女性芸人はまだまだ少ないです。だから、男性が多い空間に慣れ切っていました。だけど、逆にせやろがいおじさんとして、女性が多いイベントにゲストとして呼ばれるようになって、これまでとは違う、少数の立場の緊張感というのを感じました。そのときに、「事務所にいた女性芸人は、ずっとこんな気持ちだったのかな」って思うようになりました。
ほかにも、性暴力被害の当事者団体の方に話を伺う中で、性被害に関することは顕著にそういう面があると思うようになりました。当然、男性の性被害もありますが、数としては男性から女性が圧倒的に多い。例えば、女性は電車に乗った時も「痴漢に遭わへんかな」と思ったり、道を歩くときもすれ違った男性を「怖いな」と思ったりすると聞きました。だけど、僕も含め、多くの男性はそんなことを感じずに生きていける。それも一つの特権だったと気づきました。
「男性の特権って、魚にとっての水みたいなもんだ」と誰かが言っていました。魚はずっと水につかって生きているから、水があることにいちいち気づかない。それと同じように、男性はずっと生まれた時からいろんな特権があることが当たり前になっているから、そのことに無自覚な人は多いと思います。僕もそうでした。だけど、いまの社会で、男性には自分たちに見えていない特権と加害性があるということを自覚していくことが、とても大事だと思います。
ただ、いまの日本のジェンダー問題への取り組みって、ハリボテみたいですよね。社会の中で、女性がどう抑圧されているのか、構造的な理解が進まないまま、どう振る舞うのが正しいのかだけが広まっている。だから、森さんも、結局最後まで自分の発言の問題を理解しないままだったのでしょう。問題を理解しようとして、そこに目を向けてみれば、きっと自分の問題点がおのずと見えてきたはずなのに、「世間がうるさいからとりつくろう」という方が優先されている気がしました。
ジェンダーギャップなくすことは男の生きやすさにも
同じことは、以前自民党が議員…
2種類
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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