安倍政権の下、自民、公明両党が勝利した衆院選から4年。私たちが暮らす社会のあり方が問われるできごとが相次ぎました。間もなく迎える衆院選。有権者はこの4年に何を思い、次の4年に何を託すのでしょうか。
カウンセラーの本多玲子さん(63)は時折、福岡・天神に仲間と集まる。花を手に街頭に立ち、性暴力は許されないと訴える。
性犯罪事件で無罪判決が相次いだのを機に、2019年4月に東京で始まったフラワーデモ。男女共同参画実現に向けて長年活動してきた本多さんは、「福岡でもやろう」と動いた。
翌5月、警固公園(福岡市中央区)に40人ほど集まった。本多さんは「自分の被害を話したいと思っていた人がこんなにいたんだ」と驚いた。6月以降も月に1度集まるようになった。
20年9月、自民の衆院議員が性暴力に関連して「女性はいくらでもウソをつける」と述べた。本多さんらは、翌10月のデモで怒りと抗議の声を上げた。
今年2月、東京五輪の大会組織委会長だった森喜朗・元首相が「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」と女性を蔑視する発言をした。「本音が出たんだろうね。この時代になっても変わらないな」。5月には、50代の立憲民主の衆院議員(当時)が「自分が14歳の子と性交したら、同意があっても捕まるのはおかしい」と発言した。訴えても響かない社会に徒労感を抱くこともある。
フラワーデモには一時70人ほど集まった。全国的なデモが一区切りし、数カ月に一度の開催となった20年3月以降は20人ほどに。本多さんは性暴力の実態に即した刑法改正を求める活動に手応えを感じるが、それだけで社会が変わるとは思えない。
DV被害者への支援充実など、ここ数年の政府の政策には評価できるものもある。次の衆院選で新型コロナ対策や経済対策に議論が集中するのは仕方ないと思う一方、女性差別を許さない国にするという視点も忘れないでほしいと願う。
世界経済フォーラムがまとめた今年のジェンダーギャップ指数ランキングで日本は120位。選挙で選ばれた政治家には、先進国で主流となっている多様性やジェンダー平等の流れを日本社会の「根っこ」に定着させる努力をしてもらいたい。「一つの課題として取り組むのではなく、全ての政策にジェンダー平等の観点を採り入れた政治をしてほしい」(宮野拓也)
のしかかる自助 「ぼくら見えていますか」
菅義偉首相は、めざす社会像として「自助・共助・公助」の理念を掲げ、最初に「自助」を挙げる。
中学生の息子と暮らす佐賀県内の40代男性は「まずは自分でどがんかせないかん、というのは分かる。でも『行き詰まってから助ける』では、子どもの将来を狭めてしまう」と訴える。
5年ほど前に離婚し、シングルファーザーになった。その後、営業の仕事をしていた会社が経営不振に陥り、550万円ほどあった年収は400万円程度に。年120万円ほどの住宅ローンが家計を圧迫する。日持ちするカレーや煮物を作り置きし、食費は2人で月2万円までに抑える。11月に誕生日を迎える息子には、「プレゼントは、クリスマスか誕生日かのどっちかだけね」と言い聞かせている。
一方、所得の低いひとり親に…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル