「娘返して」「ぬくもりある社会を」 クリニック放火殺人2年で追悼

甲斐江里子 田添聖史

 26人が死亡した大阪市北区心療内科クリニック放火殺人事件は17日、発生から2年となった。いまも立ち入りが禁じられた現場の雑居ビル前では、花を手向けて犠牲者を悼む遺族や元患者の姿が見られた。

 「娘は突然殺され、普通の暮らしを奪われた。絶対に許せない」。30代の娘を亡くした両親は口をそろえた。

 まっすぐな性格だった娘は、勤め先でしんどさを感じることが増えて通院するようになった。50代の母親は「まだ何十年も生きていられたはずなのに。娘を返してほしい」と涙を流した。60代の父親は月命日に現場を訪れている。「一日たりとも娘のことを忘れたことはない。娘のために何ができるか考えたい」

 クリニックの西沢弘太郎院長(当時49)は診察中に事件に巻き込まれ、亡くなった。妹の伸子さん(46)は線香を上げ、「安らかに、穏やかに過ごしてください」との思いで読経した。

 クリニックに通っていた元会社員の30代の男性は、この日を自宅で迎えた。西沢院長に勧められて画家として再出発し、他の元患者らとも交流を続けている。「人と人がつながり、ぬくもりを感じられる社会であってほしい」と話した。

 事件では、クリニックにガソリンがまかれて放火され、患者や院長、スタッフら20~50代の男女26人が一酸化炭素中毒で亡くなった。患者だった谷本盛雄容疑者(当時61)も死亡し、大阪市内の教会関係者が遺骨を引き取った。(甲斐江里子、田添聖史)

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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