緑川夏生、長橋亮文、西村奈緒美
東京電力福島第一原発事故で福島県から新潟県に避難した人が国や東電を訴えた集団訴訟で、新潟地裁は国の責任を認めなかった。
「不当判決」。原告弁護団が地裁前で旗を掲げると、原告の一人、磯貝潤子さん(47)は「避難の権利を訴えたことのゴールは、国の責任を司法の場で判断してもらうことだった。本当に悔しい」と言葉を詰まらせた。磯貝さんは、福島県郡山市に夫を残し、小学生だった娘2人を連れて新潟市に避難した。「近いだけじゃなく、日本海側の方が被曝(ひばく)のリスクを減らせると思った」と避難の理由を語る。
原発避難者らが全国で起こした約30件の訴訟のうち、福島県内での訴訟を除けば新潟訴訟が全国最多の原告数となる。隣り合う両県は磐越自動車道で2~3時間で行き来できる地理的要因のほか、事故後の比較的早い時期に新潟県が民間の賃貸住宅を借り上げて避難者に提供する「みなし仮設」を用意したことから多く人が避難した。
原告弁護団は、避難による被害の実態を立証するために、原告全237世帯の陳述書を提出。さらに、陳述書をもとに宇都宮大の高橋若菜教授(環境政治学)が、避難に至る過程や避難後の精神的・経済的な状況などについて分析した。
分析によると、原告の約8割を占める自主避難世帯のうち、約9割が子育て世帯だった。自主避難のきっかけとしては、8割が「将来の健康影響に不安を感じた」ことを挙げた。夫を残して避難する母子避難で、夫婦が分かれて生活することを余儀なくされた世帯は6割強に及んだ。高橋教授は多くの避難者が「子を守るための避難という特色が強い」としていた。
こうした原発事故による避難…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル