連載「住まいのかたち」⑤
信頼できる隣人と、子育てをシェアする。八幡友紀(やわたゆうき)さん(39)と梢(こずえ)さん(40)の夫妻がそんな暮らしを始めて、6年になる。
暮らしている共同住宅はコレクティブハウスという。それぞれの家族が住むトイレや台所を備えた部屋のほかに、住民みんなが共有するスペースがある。
プライバシーを守りながら、共同生活を楽しむ。北欧で1970年代に始まったライフスタイルで、6歳と1歳の子どもを育てる共働きの2人にとって、なくてはならない支えだ。
ただ、梢さんはここに移り住む前、「次は普通のマンションで暮らしたい」と思っていた。
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ともに兵庫県高砂市の出身、同い年の2人が結婚し、東京での新居に選んだのは共有室のあるアパートだった。「仕事以外で人と知り合う機会になる」。友紀さんはそう考えた。
確かに友達はできた。ただ、周りは20~30代の単身者ばかり。住民同士が協力する活動もないため、顔を知らない人も多い。長男が生まれると、部屋は手狭になった。
友紀さんが見つけてきたのが、いま住んでいる東京都多摩市の「コレクティブハウス聖蹟(せいせき)」だった。NPO「コレクティブハウジング社」が管理運営する、2階建ての共同住宅だ。
夫の思いと裏腹に、梢さんはシェア住居での生活に少し疲れていた。共有の洗濯機では思った時間に服を洗えないし、深夜に共有室で騒ぐ若者もいる。
ハウスの見学には、しぶしぶ行った。そこで暮らしている人の話を聞くと、共同生活のイメージが湧いた。週2~3回は共有室の台所で当番が夕食を作り、一緒に食卓を囲むという。子育てする世帯も多く、歓迎してくれそうな手応えを感じた。
「ここならやっていけるかも」
共有室の掃除や備品の購入、イベントの企画といった係を決め、住民たち自身が運営を担うのが、コレクティブハウス聖蹟の特徴だ。顔を合わせて話す機会も多い。お互いの人柄を知り、親しくなっていくことができた。
「親だけが子育て」薄れていった
「住んでよかった」と心から思ったのは、入居から1年がたったころだ。
梢さんが体調を崩した。
夫は仕事で、連日深夜まで帰…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル