宇宙船が往来する宇宙港を鳥取に――。鳥取県が描く、壮大な未来図だ。人口最少県はなぜ宇宙へと目を向けたのか。
県は今月、月面探査車の走行試験など宇宙開発技術が研究できる月面実証フィールド「ルナテラス」を鳥取砂丘の国立公園外にオープンさせた。
起伏に富んだ砂丘の地形や砂の粒の細かさなどが月の環境と似ているためだというが、なぜ県は地球を飛び出し、宇宙へ目を向けたのか。
きっかけは8年前にさかのぼる。当時、宇宙ベンチャーの「ALE(エール)」(東京)が、人工衛星から金属球を放出し、人工の流れ星を作る事業を進めていた。
同社の岡島礼奈代表(44)は鳥取市出身。その縁で県庁で県担当者らとの意見交換会があり、宇宙をテーマにした地域振興について、「一緒にやりましょう」と意気投合したという。
県産業未来創造課の井田広之課長補佐(46)は「星空や宇宙は、県全域で分野も立場も超えて多くの人が参加できるし、『鳥取らしさ』も打ち出せる。岡島さんとの出会いが大きな刺激になった」。
「鳥取らしさ」とはなんだろうか。
ALEの岡島代表は言う。「鳥取は星空がきれい。『宇宙が近い』と感じて育ち、興味を持つきっかけにもなった」
県の人口は全国最少。だがその半面、夜間の明かりなどで星が見えにくくなるなどの「光害」が少ない。
中国地方最高峰の大山や鳥取砂丘は有名な星空スポット。環境省が2012年度まで続けていた「全国星空継続観察」では、鳥取市の山間部は星の見えやすさで何度も日本一になったこともある。
県はそんな特徴を強みとして、「鳥取県」ならぬ「星取県」を名乗り、観光資源として活用している。
また16年には、民間による国際的な月面探査レースに日本から唯一参加していた宇宙ベンチャー「ispace(アイスペース)」のチーム「HAKUTO(ハクト)」が、走行試験のフィールドとして鳥取砂丘に関心を抱いていることもわかった。
県は協力を持ちかけ、両者で連携協定を締結。実際に、鳥取砂丘での走行試験も実現した。
井田課長補佐は「鳥取砂丘に月面探査車開発のニーズがあるとは思いつかず、とても驚いた。いろいろな方とのご縁や偶然が重なり、新たな視点が得られた」と振り返る。
月面と鳥取砂丘の環境は似ているのか
実際に、月面と鳥取砂丘の環…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル