島のシンボルを残せないか――。無人島の馬毛島(鹿児島県西之表市)で進む、米軍機訓練移転を伴う自衛隊基地整備をめぐり、島にある山の保存を求める陳情書が市議会に出された。提出したのは元島民ら46人。基地建設を容認する市民も含まれ、関係者の注目を集めている。(加治隼人、野崎健太)
市「元島民のシンボル」 →防衛省の答えは…
元島民らが求めるのは馬毛島中央部にある岳之腰(たけのこし)の保存。標高71メートルの小さな山だが、「島に生まれ、幼少期を過ごした私どもには、多くの思い出や郷愁がある」と訴える。
マゲシカをはじめ、動植物や豊かな漁場を育む上で重要な存在だとも主張し、山を切り崩さずに済むよう、滑走路の設計変更を求めている。
防衛省は1月の着工後、仮設桟橋や港湾施設の整備を進めてきた。今後作業が本格化する2千メートル級の2本の滑走路付近に岳之腰が位置している。防衛省は「平坦(へいたん)に整地し、航空機の支障にならない地盤の高さになる」としている。
市は環境影響評価(アセスメント)の段階から「市民や元島民のシンボル的存在」として、岳之腰の保存を要望。だが防衛省は「種子島の上空に飛行コースがかからないよう滑走路を配置する必要がある」として、応じなかった。
生活の中心にあった山 「赤い旗が揚がると、船を走らせた」
造成工事に先立ち、防衛省は10月中旬、頂上付近にあった旧日本軍のトーチカ(防御陣地)を解体。戦後にトビウオ漁の見張り台に使われた歴史があり、市は解体時の立ち会いを求めたが、実現しなかった。
基地建設への賛否の明言を避けている八板俊輔市長は11月上旬、改めて防衛省に岳之腰の保存を要望した。
そうした報道を目にした馬毛島出身者から「岳之腰を守りたい」との声が上がり、陳情の動きがスタート。元島民や八板市長の支援者らが、11月下旬までの約1週間で、市内外に住む46人の賛同を得て回った。
「あの山は島の生活の中心にあった象徴。なくなったら馬毛島じゃない」。
島に約20年暮らした男性は…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル