「家族に連絡を」携帯託し夫は濁流にのまれた 九州北部豪雨10年

 熊本県阿蘇市で22人が犠牲となった2012年7月の九州北部豪雨。12日に同市であった追悼行事で、参列者の最前列に合志市の西岡富美子さん(67)の姿があった。10年前のこの日、濁流の中で最後まで生きようとした夫を思い、黙禱(もくとう)を捧げた。

 「あの日々」の記憶は決して色あせることがない。阿蘇市内のスーパーに勤めていた夫の良之さん(当時55歳)は早朝、寝ていた富美子さんに声をかけることもなく自宅を出た。流木で通行できなくなっていた国道57号から脇道へ。ガードレールが途切れた所で車ごと田んぼに流された。午前6時すぎだった。

 ガードレールに救われた大分県宇佐市の男性が見守る中、車から脱出した良之さんは、数十メートル離れた道路に戻ろうとした。しかし、男性のところまでたどり着いて携帯電話を託し、家族への連絡を頼んだところで力尽きた。なかなか携帯を持とうとせず、富美子さんが「何かあった時のために」と持たせたばかり。連絡先に登録されていたのは、自宅と富美子さんの携帯など数件しかなかった。

 午前7時半ごろ、警察から富…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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