スペインのマドリードで開かれている第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)で、地球温暖化対策の強化を求める若者の動きが注目を集めている。抗議行動の口火を切ったスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(16)が加わり、世界各地から若者たちが集結している。「将来にツケを回すな」といますぐの行動を求める声に、大人たちはどう応えるのか。
――何を求めるのか?
気候正義を!
――いつ求めているのか?
今だ!
マドリードの中心部で6日に開かれた若者主導のデモ行進には、主催者発表で「50万人」が参加した。ゴール地点でグレタさんが「権力者は責任を持たなければならないし、未来と現在の世代を守らなければならない」と訴えると、聴衆から大きな拍手がわいた。
気候正義とは、途上国や将来世代が温暖化の被害にあうのを不公正ととらえ、原因をつくった先進国やこれまでの世代に責任ある行動を求める考え方だ。グテーレス国連事務総長は若者をテコに各国政府に対策強化を迫っている。COP25の開幕式では「彼らは今日正しい道筋をたどる必要があることを知っている。明日ではない」と演説した。
若い世代の危機感は高まっている。コンサルティング会社デロイトがミレニアル(1983~94年生まれ)、ジェネレーションZ(95~02年生まれ)を対象に行った意識調査では、気候変動や自然災害がテロや失業を抑えて「最も心配すること」のトップだった。
国連児童基金(UNICEF)は6日、5億人以上の子どもが台風や海面上昇などの洪水のリスクのある地域に住む一方、約1億6千万人の子どもは極度の干ばつ地域に住んでいると発表した。
9日、COP25の会場内でグレタさんとともに記者会見した南太平洋のマーシャル諸島出身のカルロン・ザクロスさんは「自分たちが生み出したわけではない問題に対処しなければならない」と、温暖化問題の理不尽さを非難した。
島は標高2メートルしかない。マドリードに来る前には浸水で200人が避難を強いられた。海面上昇のため島民は土地のかさ上げか、移住かの選択を迫られている。「気候変動で2メートルを失えば、文化も言葉も伝統も失われる。失いたくない」
チリから来たアンヘラ・バレンズエラさんは「世界の目は南半球に向いてこなかった。弱い温暖化対策を各国が褒め合っている間に、地球は燃え尽きてしまう」と強調した。
日本からは約20人の若者が参加している。これまでも環境NGOのメンバーや研究の一環で参加する大学生たちはいたが、今回はグレタさんらの活動に刺激されて初参加する若者が多いのが特徴だ。
小野りりあんさん(30)は、2カ月前にモデルの仕事を休業し、温暖化対策の強化を訴える若者組織「フライデーズ・フォー・フューチャー(FFF)」のメンバーと欧州各地で交流しながら、1カ月かけてマドリードに来た。「気候危機に取り組む人たちが世界中から集まる現場で、日本でできることを見つけたかった」と初めて参加した理由を語る。
大西洋をヨットで移動したグレタさんを見習い、温室効果ガス排出量の多い飛行機を避け、船とシベリア鉄道などで移動した。COP25の会場に集まった若者の動きを、インスタグラムなどのSNSで日本の若者たちに発信する。「できるだけ飛ばない。肉を食べない。プラスチックを使わない。これを実践しています。日本でも、もっとFFFのムーブメントを広げていきたい」(松尾一郎、香取啓介、編集委員・石井徹)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment