聞き手・田中聡子
「子どもの貧困」をめぐり、さまざまな政策が実施されてきました。重視されているものの一つが、「将来の自立」を目指す教育支援です。経済学者の原伸子さんは「福祉を『投資』と扱うことでゆがみが生じている」と指摘します。話を聞きました。
子どもにも「コストとベネフィット」
子どもの貧困を考える時、根本の「貧困を生んでいる社会の構造」をとらえる必要があります。しかし、いま重視されているのは「将来自立した労働者になるため」の教育支援です。このことには、1980年代から続く福祉国家の変容が投影されています。
60年代に、米国のベッカーら一部の経済学者が経済理論を無理にあてはめて、子どもを幸福を与えてくれる「消費財」や投資の対象と考える「投資財」として扱う理論を打ち出し、子どもを「コストとベネフィット(利益)」の視点でとらえる考えが広まりました。こうした考え方は社会政策にも影響を及ぼすようになります。
市民を労働者に育てるために
私が研究対象とする英国では…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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