岐阜県山県市の公立小中学校で、今年度から「山県学園構想」のカリキュラムが始まっている。複式学級がある小さな学校も統廃合せずに存続させ、ほかの学校と合同授業をして大人数で学べるようにした。統廃合が進む全国の流れと異なる試みで、注目されている。(高木文子)
合同授業へ出発 「朝の会」はバスの中
10月下旬の朝。山あいにある山県市立いわ桜小学校の校庭で、5、6年生が合同授業へ向かうスクールバスを待っていた。校長らが運動会のために校庭を整備していると、何も言われなくても児童が手伝いを始めた。小さな学校ならではのアットホームな空気が流れていた。
全校児童は27人。5、6年生は計8人で、異なる学年が同じ学級で学ぶ複式学級だ。合同授業がある同市立美山小まではバスで18分。5、6年生と担任教諭は車内で「朝の会」をしながら向かった。
美山小は5、6年が1学級ずつある。そこにいわ桜小の児童たちも加わって、1クラス30人ほどになり、社会や英語、体育の授業を受けた。「みんなで意見を言おう」。社会の授業では、学校に関係なく4、5人のグループに分かれて意見をまとめた。英語もクラス内で次々とペアを変えて仲間と会話を交わす。体育のバスケットボールでは、混合チームをつくった。
休み時間を告げるチャイムとともに、両校の児童が校庭へ駆け出して鬼ごっこを始めた。美山小の山本夕莉さん(5年)は「一緒に鬼ごっことかで遊ぶようになった」。いわ桜小の桝本仁平さん(6年)は「最初は溶け込みにくかったけれど、今は話がしやすくなった。バスケやサッカーが大人数でできるから楽しい」と話す。
両校は市の構想に先行して、昨年度から5、6年生の合同授業を始めた。昨年度は週1回だったが、今年度は週3回に。いわ桜小の子が安心して学べるように、新学期のうちは教室内で近い席にしているが、だんだんとグループ活動で交流を増やしていく。
両校とも美山中学校の校区内。いわ桜小の高畑友宏教諭(48)は「中学校で同じクラスになる子たちなので、中1ギャップのハードルも取り除くことができる」と話す。今年度からは、美山中の体育大会にも両校の児童が参加した。
小中12校すべて存続 市教委が掲げる「山県学園構想」
山県市には公立の9小学校と3中学校があり、児童生徒は1681人(5月時点)。小学校のうち3校に複式学級があり、4校は全学年が1学級ずつだ。
市内の小中学校の適正規模はどうあるべきか。市教育委員会が一昨年に保護者にしたアンケートでは、1学級あたり15~25人の少人数教育を求める声が多かった。学識者や自治会、PTA関係者らでつくる検討委員会は昨年、小規模校のきめ細かな指導と、近隣校の仲間との学習を両立させる仕組みづくりを市教委に提案した。
これを受けて市教委が掲げた…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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