それぞれの思いを託した清き一票。選挙離れが進む今、こんな「うっかりミス」が許されるはずがない。静岡県富士宮市で7月21日に行われた参院選比例代表の開票作業で、自民党の山田太郎氏=当選=に投じられた515票が誤って、れいわ新選組の山本太郎氏=落選=の票に計上された。「思い込み」「ヒューマンエラー」。市選挙管理委員会はこう釈明するが、山田氏に投票した市民からは徹底的な再調査を求める声が上がる。ミスは「氷山の一角」なのだろうか。
■「私もオタク」人生初の投票で…
《投票が死票になった》《山田さんに入れたのにおかしい》
投開票翌日の22日から、SNS上では不可解な得票を指摘する声が相次いでいた。根拠となったのは、県選管が公表した県内の自治体別の得票結果。全国で50万票以上を集めたはずの山田氏の得票が、人口約13万人の富士宮市で「0票」になっていたためだ。
指摘を受けた富士宮市選管が調査を開始し、間もなく集計ミスが発覚。当初、山本氏が1453票、山田氏は0票としていたが、山本氏938票、山田氏515票に訂正した。
2人の当落に影響はなかったが、「せっかくの一票。選管には大切に扱ってほしかった」と話すのは、山田氏に一票を投じた女性(19)。漫画やアニメの「表現の自由」を守ると訴えた山田氏の姿勢に共鳴したといい、「私もいわゆる『オタク』。山田氏の政策に感銘を受けた」という。
女性にとって、今回が人生で初めての投票だった。「選管が早く再集計したことはよかった」としつつ、「他の自治体でも同じミスが起きている可能性がある。全国的に調査してほしい」と求めた。
山田氏は23日に更新したツイッターでミスについて「民主主義の基本である選挙ではあってはならない」と苦言を呈した。
■ダブルチェックでも気づかず
信じられないミスはなぜ起きたのか。
市選管によると、開票作業は、まず機械で候補者ごとに票を仕分け、100票または千票単位で束ねた後に、職員が候補者名や票数を記載した「有効投票点検票」を添付する。これを別の職員がパソコンでシステム上に票数を入力し、集計する流れだ。
今回のミスは山田氏の票の束に、誤って一字違いの山本氏の点検票を付けてしまったことが原因だった。
さらに点検票を付けたりパソコンで入力したりする際は複数の職員で候補者名や票数に誤りがないかチェックする決まりがあるが、いずれの過程でも誤りに気づく職員はいなかった。
市選管の担当者は「職員の完全な思い込みによるヒューマンエラーだった」と釈明。再発防止策を検討するとした。
■「ネット投票進めるべき」
氏名が似ている山田氏と山本氏。市選管も「事前に十分注意していた」としながらも、イージーミスを防ぐことができなかった。
過去の国政選挙では、投票総数よりも票が足りないと思い込んで白票を水増したりした選管職員が、公職選挙法違反罪などで有罪判決を受ける事件も起きている。SNS上ではこうした事件を念頭に、山田氏支持者から「意図的なのでは」「本当に過失なのか」との指摘も上がった。
一方、千葉県の鴨(かも)川(がわ)、いすみ両市では、山本氏の「案分票」を山田氏に割り振るミスが発生。富士宮市のケースとは票の流れが逆だったが、「名前が似ていて間違えてしまった」(県選管)という理由は同じだった。
「全国で『山田太郎』と『山本太郎』の票を数え直したら、当落を変えるほどではなくても、必ず今の得票数とは異なる結果が出る」と話すのは選挙制度に詳しい東洋大の山田肇(はじめ)名誉教授。「富士宮市などで発覚したことは氷山の一角」とみている。
山田名誉教授は、投票の際、候補者の名前を投票用紙に書く「自書式」が、集計ミスなどを誘発していると指摘。ミス防止や投票率向上のために「インターネット投票の導入などを進めていくべきだ」と述べた。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
Leave a Comment