四つの市民襲撃事件で殺人罪などに問われ、一審で死刑判決が出た特定危険指定暴力団・工藤会のトップで総裁の野村悟被告(76)らの控訴審が始まった。27日の被告人質問に合わせ、工藤会幹部を摘発する「頂上作戦」を指揮した県警OBの尾上芳信氏(62)に、工藤会との攻防の歴史や控訴審の位置づけを聞いた。
――かつての工藤会は北九州の街にどのような影響を与えていたのでしょう。
建設業からは上納金、飲食店や風俗店からはみかじめ料を取りたてていた。一般市民にも「金払わんかったら、拳銃で撃つ、刃物で刺す、あるいは殺す」みたいな繰り返しで、警察は捕まえきれない。逆らえば自分たちも狙われるのではないかという恐ろしさがあった。市民による暴力団排除が進まなかったのは、今振り返ると致し方なかった。市民も警察と工藤会の力関係を見ていて、どちらの言うことを聞くべきか見極めている。
――そうした状況で2014年の頂上作戦は重要だったと。
(野村被告の関与を示す直接証拠がないなか)当初は、県警内にも「本当にできるのか」と懐疑的な見方があって、ゼロからのスタートだった。ただ、元漁協組合長射殺事件(1998年)では、実行犯らがすでに殺人罪などで判決が確定しており、それまでの取り調べや公判で幹部とつながる(間接的な)証拠は出ていた。
工藤会の呪縛を解いてもいいのでは
――事件着手に向けて、どん…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル